【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.87(9/6号掲載)

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「原因あっての結果です」

 4月より新しい会社に入社後も、おかげさまで各地のたくさんのJAや直売所出荷者さん向けの栽培講習会や研修会の講師としてお呼びいただき、新しい栽培情報など発信させていただいております。8月28日にはJA福岡市東部女性部の方々若手生産者である青壮年部営農及び栽培講習でもお話の機会をいただきました。

JA福岡市東部女性部栽培講習会の様子

 そこで、うれしかったのが、講習会前にたくさんの栽培に関する、ご相談、お悩み事をいただきました。「カブは収穫できるけど、肌が美しくない」「サトイモに珍しく花が咲いた。あとどうしたらいいですか」「定植後のゴーヤの葉が、急に白化現象を起こした。なぜ?」など。

 結果には、必ず原因があります。「頻繁に飛んでくる害虫等による外的な要因」とか「トマトの茎葉はしっかりしているけど実が付かないなど肥料の与え方の人為的なミス」といったふうに。

 私はたくさんのご質問に対し、納得していただける回答をするためには、自分で確かめてみて、知見を高めるしかありません。ですから、ご相談は、私にとって貴重な財産となります。また、ご相談内容は、同様なお悩み、疑問をお持ちの方も多く、対応策を共有していただくチャンスでもあります。

 この時期に多く寄せられているご相談が「カブは一応収穫できますが、肌が汚い」。推測すると、一応カブは収穫ができているのですが、店頭に並んでいるように肌が艶のある真っ白ではなく、汚いということでしょう。原因はいくつか考えらえます。

 ◎土壌の中の難敵害虫「キスジノミハムシ」の幼虫による、カブの表皮の食害痕。
 ◎カブの生育に必要な栄養素として、大量には吸収しませんが、微量ながら必ず生育に必須である「ホウ素成分」の欠乏。
 ◎まだ発酵が不完全だった鶏ふんや牛ふんを土に混ぜ、種を播いた。

 厄介なのが、すべて、土の中で起こっている症状なので、直接目視できないし、処置が後手に回り、収穫してみないとわからない。この症状は同じアブラナ科のダイコンでも、同様の症状が発生します。対策としては先行投資型となります。

 「キスジノミハムシ」については、カブ、ダイコンに限らず、ハクサイ、コマツナ、ミズナなど比較的、葉が柔らかいアブラナ科野菜に、集中的に被害発生が拡大しています。

 有機的な処方は、過去、連載でもご紹介しました、厳夏期の熱と被覆ビニールを利用した太陽熱土壌消毒処理。つまり、土の蒸し焼き。ひじょうに有効な手段ですが、実施期間が限定されます。化学処方では、使用目的と使用作物が適合した剤の使用。例えば「フォース粒剤」は種まきや苗定植前に土壌によく混ぜておくことで、害虫防除の効果が得られます。

 「ホウ素」については、生育に必須でありながら、微量でよろしいので、元肥にホウ素入りと表示されている肥料を選ぶか、「ほう砂」を1坪当たり2グラムの目安で土に混ぜる。土作りには完全に発酵が済んだ、優良な鶏ふんや堆肥を使うこと。根もの野菜は、どちらかというと、収穫を見据えた先行投資型土作りがおすすめです。

 繰り返しますが、結果には必ず原因があります。一歩一歩課題を理解し、対策することが手応えのある収穫物につながっていくと言えるでしょう。次回は、「ブロッコリー、カリブロ、カリフラワーの栽培について」のご相談にお答えします。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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