【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》若者感覚で見直す「百耕の絵馬」

まち角アイキャッチ

絵馬といえば、個人が合格祈願などで神社に納める小絵馬を思い浮かべる人が多いだろう。ただ、昭和30年代までは、幅が1メートルを超す大絵馬を神社に奉納する風習が根付いていたという。この時代まで活躍し「博多最後の絵馬師」と呼ばれる吉村百耕が描いた35面の写真を収録した小冊子=写真=が出版された。糸島市にある絵馬も2面取り上げている▼百耕の孫の精高さん(福岡市)が「百耕レミニッセンス・プラン」という企画を有志で立ち上げ、小冊子を発刊した。精高さんによると、百耕の大絵馬は、県内に約180面あり、画題は神話や合戦、お伊勢参りとさまざま。糸島市には21面あり、福岡市以外では宗像市と並んで多い。大絵馬は、雨ごいや日こいの願いを込めて奉納されたこともあり、農村地域によく残っているという▼小冊子に載った糸島の2面の大絵馬は、いずれも櫻井神社に掲げられている。その一つが「平景清(たいらのかげきよ)錣引(しころびき)図」。平景清が源平屋島の戦いで、相手の武者の兜(かぶと)の錣を引きちぎる勇猛な姿を描く▼精高さんは、この大絵馬の絵柄を基にしてスタンプを作成し、櫻井神社に貸し出している。参拝者の御朱印帳にこのスタンプを押してもらい、百耕の大絵馬への関心を呼び起こしたいとの願いを込める。県内のほかの九つの神社でも同様の取り組みを始めた▼企画名にあるレミニッセンス(英語reminiscence)は日本語で回顧の意味。「現代の視点で、古い文化を見直してみる。百耕の大絵馬は理屈抜きでカッコいいんです。きっと若者の心をつかみますよ」と精高さん。櫻井神社を参拝した際、ぜひ社殿の中を見上げてみたい。
小冊子の詳細は公式サイトhttps://hyakko.net/

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