全長1.7メートル、絶滅危惧に分類
生態解明への手掛かりに
糸島市二丈福井の加茂川河口付近に13日、全長1.7メートル、推定体重200~250キロの巨大なウミガメ「オサガメ」が打ち上げられた。仰向けに横たわるオサガメの姿は、「自然の驚異そのもの」と近隣住民が駆け付け、大きな話題となった。西太平洋のオサガメは、絶滅危惧ⅠAに分類される貴重な種で、神奈川県からも専門家が調査に訪れ、浜辺で解剖と試料の採取が行われた。
オサガメは地球上で最大のカメであり、500万年以上前から存在が確認されている。暖かい南の海の砂浜で産卵し、餌を求めて北極海付近まで移動することもあり、1000メートルを超える深海まで潜ることができると言われている。日本では平安時代からその存在が記録される。
近年は人間活動の影響で急速に個体数が減少し、絶滅の危機にひんしている。釣り糸や網による事故のほか、卵の違法採取、営巣地の破壊、さらには海洋プラスチックごみをクラゲと誤認して摂取し、衰弱するケースなどがあげられる。
最初にオサガメを見つけたのは、朝の小学生の見守り活動をしていた佐波行政区区長の吉丸信秀さん。浜辺の橋の上から、潮が満ちた浜辺に浮かぶ巨大なカメを見つけた。近くにいたフリースクール「産の森学舎」の校長・大松康さんが「皆で手を合わせよう」との思いで子どもたちと一緒に浜へと向かったが、初めて見る巨大なカメに「ただものではない」とウェブで調べたところ、希少なオサガメと判明した。そこで、以前から海岸環境調査で交流のあった九州大学の生態工学研究室の清野聡子准教授に連絡。周辺の海水を採取・ろ過し、その中に含まれるこのカメのDNAを分析するための調査を行った。他のカメ類と違い、甲羅がゴム状の皮膚となっているオサガメを囲み、子どもたちは恐る恐るヒレや胴体部分を触り、「発泡スチロールのよう」と声をあげたり、「グミみたい」と驚いたりしながら、五感で観察した。
清野准教授は「対馬暖流の生態系としては貴重な種。まだ生態がよく分かっていないので、今回の試料採取で、地域の個体群に関する手がかりを得たい」と話した。また、調査を手伝った小学5年の岩下真子さんは「最初はかわいそうと思ったけれど、初めて見る生き物に興味がわき、このウミガメのことをもっと知りたくなった」と目を輝かせた。
翌日には、オサガメ漂着の知らせを受けた神奈川県の水産研究・教育機構の水産資源研究所や、福岡市の海の中道海洋生態科学館の獣医らも駆けつけ、解剖と試料採取をした。同研究所の岡本慶主任研究員は「日本では年間10体程度しか漂着例のない貴重な種。漁業との共存のため、海中での生態解明に向けた試料にしたい」と話した。
=糸島新聞ホームページに記事掲載