落葉と寒肥
この時期になるとカキやナシ、ブドウなどの落葉果樹、サクラやサルスベリなどの落葉樹の葉が色を変えて落ちてきます。モミジは真っ赤、イチョウは真っ黄色と、鮮やかな葉もじゅうたんのようにびっしりと地面を覆います。では、なぜ、木々は葉を落とすのでしょうか?
落葉は、寒さが厳しい冬か、水分の乏しい乾季に起こります。葉には、光合成を行う働きのほかに、根から吸い上げた水分を葉の気孔から蒸発させる働きがあります。寒さが厳しく水分を十分吸収することができない冬に葉を落とすのは、水分不足で枯れてしまわないためです。葉は古くなるほど、余計な養分や、いらなくなったものなどがたまってしまい、光合成の働きが衰えてきます。植物の本能にはあらためて感心させられます。
一方、ツバキやマツなどのように、冬も緑の葉をつけ、弱い光でも栄養をつくる木を常緑樹といい、常緑樹の葉は、針状の葉のため光合成ができる面積は少ないですが、気孔の数も少なくなり、水分蒸発も少なくて済みます。そのため寒い時期でも葉を落とさずエネルギーを蓄えることができます。知っているようで、案外知らないものです。
それともう一つ、寒肥(かんごえ)。寒い時期に、植物の成長はほとんどありません。なのに、どうしてこの時期に肥料を与えるのか?この時期の施肥は土の中で植物に吸収されやすい形にかわり、春の成長期に効き目が表れる肥料となります。
樹木のようにゆっくりと肥料を吸収するタイプの植物は、年間の施肥量の中でも元肥が大きなウエイトを占め、特に大切になってきます。
では、どのような成分がよろしいのでしょうか。園芸店やホームセンターには、パッケージにその名のごとく「寒肥」と表示しているものや「果樹・庭木の肥料」など専門肥料などが出回っています。
ともに内容は、主原料が有機肥料。有機質に由来する肥料分は冬の寒い時期でも吸収されやすいから寒肥に向いているのです。また、寒肥として多くの量を一度に与えるのでゆっくりと肥料化して根を傷めない有機質肥料が向いているとも言えます。その上、有機質肥料には土壌を改良する効果があるので植え替えをしない樹木や宿根草の肥料には適しています。
与え方は、根本まわりには、肥料を吸収する根は少なく、木が倒れないようにしっかり支える頑丈な根が発達しています。なので、効率よく肥料を吸収させるには、若い根が発達している枝先の下にあたるところを中心に与えるのが賢明です。与える量は、深さ20センチのところに1平方メートル当たり100~200グラムの目安で与えてください。
今年の夏は、異常な暑さ、乾燥が続きました。樹木・果樹類なども暑さにたえるために必要以上に体力を消耗したと推測します。やっと本来の秋冬らしくなったこの時期、来年の樹木類の生育の頑張りを応援するためにも肥料を施してあげましょう。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。