【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》夢広がる映画「ら・かんぱねら」

まち角アイキャッチ

夢がかなった先に、さらなる夢がいくつも待っていた。ピアニスト、フジコ・ヘミングさん(今年4月死去)の演奏に魅せられ、52歳から独学でピアノの練習を始め、プロでも難しいとされるリストの「ラ・カンパネラ」をマスターした男性がいる。佐賀市のノリ漁師、徳永義昭さん。ノリ網を張る長い支柱をいくつも海底に打ち込んできた無骨な指を、演奏家の指へと育て上げていった▼徳永さんをモデルにした映画が完成した。伊原剛志さん主演の「ら・かんぱねら」。佐賀市で11月半ばに試写会があり、鑑賞する機会があった。上映に先立ち、伊原さんら出演者が舞台あいさつに立ち、どの顔も晴れやかな笑みを浮かべていたのが印象的だった。その笑顔に触れながら、実はこの物語を通し、いろんな人が夢を実現していると感じるようになった▼伊原さんは壇上で、ピアノの演奏シーンは吹き替えなしに、すべて自身が奏でたことを明らかにした。伊原さんも徳永さんと同じく、ピアノの演奏経験は一切なし。「役者として、挑戦しないわけにはいかない」。徳永さんになりきりたいとの強烈な決意があったのだろう。撮影開始までの半年間という限られた時間で、基礎練習をしないまま、いきなり難曲の習得に挑んだ。驚きの成果を、ぜひ映画で見てもらいたい▼監督は鈴木一美さん。映画プロデューサーの実績を重ねてきたが、監督は今回が初めて。テレビ番組で知った徳永さんのとことんやりぬく心意気にほれ込み、徳永さんに映画製作の承諾を得ようと、粘り強く通い続けることから始めた▼その熱意が、撮影現場の手伝いや製作費集めという大変な労力がかかる映画づくりを現実のものとしていく。徳永さんの小中高時代の同級生が中心となって支える人の輪が広がっていき、県商工会議所連合会会長をトップにした「支援の会」発足へと発展した。「この曲を弾きたい!」。徳永さんの夢は、多くの人の夢づくりにつながった。映画は1月31日から佐賀市で先行公開。挑戦の一歩へと、きっと、あなたの背中を押してくれますよ。

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