希少なキノコ類「オニフスべ」
昨年、実家の畑の川土手の草刈りをしました。1,500坪ある畑で、今は休閑しているため、草刈りをさぼっていたところ、これがアウト。昨年の初冬も気温も高かかったためか、草が勢いよく伸び、ヒエやススキは背丈が1メートルにもなり、刈った草が重く、跳ね飛ばすのにすごい力がいります。また、厄介なのが、「アメリカセンダングサ」。環境適応能力が強いため、畑地や乾燥した荒れ地などにも生えます。花期は秋で、茎の先に、多数の小さな黄色い花(筒状花)が、まるく集まってつきます。この花の集まりの外側には、細長い総苞片(そうほうへん)が何枚もつき、まるで緑色の花びらのように見え、たいへん愛らしさを感じます。ところが、今の時期トゲのある種子が手袋から衣服まで刺さり、おまけに茎も木々のように硬くなり、なかなか手強い雑草です。
悪戦苦闘しながら、背丈の高い草刈りをしていたところ、突然、地上部から得体のしれない物体が現れました。はじめは、どこかの子供さんが、ドッジボールを雑草の中に投げ込んだかなと思ったら、何個も現れ、さすがの私も一瞬後ずさりし、ひるみました。
「気持ち悪う~」「未確認生物かいな」「もしかしたら、世紀の発見?」なんて考えながら、恐る恐る近づくと、大きな球体がコロコロっと転がり、中心部からほこりみたいなのが、フワッと飛んでいきました。どうも重量はなさそう。
草刈りをやめて、観察開始。画像などを収めて、解析。すると、どうもキノコ類の「オニフスベ」のようです。私は過去、2回見たことがあります。1回目は、JA糸島職員時代に、仲良くしていただいていた生産者の方が「この大きいボールのごたあとは、何ですな」と持ち込まれたとき。2回目は草刈りをしていて、小さいソフトボール大の同様な物体を見たときです。ともに共通点は、マッシュルームみたいに、真っ白できれいな球形をしていました。
今回は、茶色で大きく表皮がいびつで、ちょっと気持ち悪く見え、違うキノコに見えます。よく調べてみると、「オニフスベ」は地面から突然バレーボールのような白い球形として発生するキノコで、密に集まった菌糸でできているそうです。内部に胞子がつくられ、成長の途中で幼い時は表面も内部も白色で、ゴムまりのように弾力があり、若いときははんぺんのような食感で食用になりますが、成熟すると内部が茶色くなり、胞子で満たされ粉状になるので食べることができないとのこと。
オニフスベ属の仲間は世界に4種、日本には本種だけで日本特産ですが、発生数が減っていて広島県の準絶滅危惧種に選定されているとのこと。オニフスベは、見つけようと思って見つけられるものではないため、草刈りは大変でしたが、うれしい気持ちでいっぱいです。
土の中にすむ菌類や細菌などの土壌微生物は、自然界を支え、地球全体の健康にも貢献しています。こうした目で、珍しいものだけでなく、いろんなキノコや菌類に、向き合ってみてください。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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