「いとしま市民大学」の30周年事業 —伊都文化会館—
本年度で終了する「いとしま市民大学」の30周年記念事業が8日、糸島市の伊都文化会館多目的ルームで開催された。現役の受講生やこれまで参加してきたOBが集まり、地域の生涯学習を普及し、住民同士の交流を深めてきた同大学の集大成の場となった。
事業の第1部では、「クールITOSHIMA~多文化共生都市・いとしまの実現に向けて~」をテーマに、市内在住の外国籍住民による座談会を実施。韓国、中国、インドネシア、ドイツなど多様なルーツを持つ7人が登壇した。「日本に来て驚いたこと」という問いに対しては、「選挙運動が静か。自国では旗を振るなどしてにぎやかに応援する」「トイレのウォシュレットや消音機能などの複雑さに驚いた」「お酒の飲み方や煙草を吸う時のマナーが違った」「ルールの多さが印象的」など多岐にわたる意見が出た。
また、「糸島の良さ」については、自然環境の豊かさ、新鮮な野菜や魚介類のおいしさ、人の温かさなどが挙げられた。一方、多文化共生における課題についても触れ、「暮らしや日々の困りごとを気軽に相談できる場所が少ない。あっても知られていないため困っている人が多い」との指摘があった。登壇者たちは会場に向けて「隣に困っている人がいたら、情報を伝えてあげてほしい」と呼びかけた。
参加者からは、「糸島の自然への思いなど、人間の感性には共通点が多い。世界では戦争が続いているが、まずはあいさつから始める交流が平和への道だと感じた」といった感想や、「共同作業はお互いを理解する第一歩になるので、一緒に何かをする機会を増やしていきたい」という声が聞かれた。
座談会に続いて第2部では、九州発祥の伝統芸能「筑紫(つくし)舞」が披露され、参加者は千年以上にわたり伝承されてきた宮廷舞楽の雅(みやび)な舞に見入った。
3年前から「歴史散歩」や「国際交流」などのコースに参加していた波多江理恵子さん(61)は「引っ越して来て知り合いがゼロだったが、参加を通じて友人もでき、とても有意義な時間を過ごせた」と名残惜しんだ。
同大学理事長として活動を締めくくる井工介さん(77)は、「5つの専科ごとの責任者がしっかりしており、皆さんの適材適所の動きでここまで続けることができた。このつながりが次の活動へと広がっていくことを願っている」と充実した表情を見せた。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)