【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.106(1/24号掲載)

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海外の農業情報 ベトナム編

 前回に続き、年末年始に訪問した海外での農業の状況などについて報告します。今回はベトナムのホーチミン大農産物生産拠点ダラット高原。ベトナムについて、事前にいろんな情報を耳にしていましたが、目のあたりにして驚いたのが若者とバイクの多さ。人口構造は、2024年のベトナムの人口は9930万人で、平均年齢は33.9歳ということ。ベトナムのバイク保有台数は、同年11月時点で約7700万台と推定されており、これは世界で4番目に多く、人口に対する保有率は77%に達しているとのこと。さらに驚いたのが、「ホーチミン」都市圏人口は約1100万人で、東南アジア有数の巨大都市で、中心地は超高層ビルが林立しており、まるで東京都心のようでした。

 そのベトナムは農業従事者が人口の35%を占めており、狭い農地面積で農業を行っているため、効率が悪いという課題も大きく、近年はベトナム政府がハイテク農業の推進政策を打ち出し、インフラ整備・大規模化、市場開拓の助成などを積極的に行っています。

 また、ベトナムの人々は、花をたいへん愛されてあり、それはかけがえのない信仰を保ち、大いに暮らしに反映させられ、その信仰がベトナムの花の文化に大きな影響を与えているのではないかと思います。

 ホーチミン郊外の大規模なバナナ農園や近代的で巨大なハウスでは、パプリカが栽培されていました。その規模に驚きはしましたが、現地で相談を受けたのが土壌の病害。バナナ園では土壌の悪玉病害菌。パプリカハウスではウイルス病。土壌分析を行いましたが、確かに病害の原因は、いくつか考えられますが、土壌の影響も大きいようでした。

広大なバナナ農園
ウイルスが発生しているパプリカ

 ダラット高原は、標高1500メートルの高地で、南国ベトナムの高級避暑地となっています。宿泊したホテルには暖房がなく、扇風機のみ。日中は30度近くまで気温が上がり、夜間は8度まで下がるという気候を体験しました。

 そのような寒暖差によって美しい花を育てることができ、ビニールハウスがぎっしり立ち並び、多様な品種の切り花が栽培されていました。その他、お釈迦様の頭を思わせるデコボコが表面を覆う、濃い緑色の果物を育てている釈迦頭農園やカンボジア国境近くの農園芸店なども立ち寄り、どんな肥料などが販売されているのかなど、土壌と肥料の研究を行いました。

ビニールハウスが町中に所狭しと立ち並んでいる

 ベトナム国民の食と文化を支える多様な農業。野菜、果樹、切り花と温暖な気候を利用し、周年で栽培。コメ、コーヒー、ゴム、カシューナッツ、コショウなどは重要な輸出農産物で、若い農業者が生産の原動力ともなっています。

カンボジアとの国境近くの農園芸店

 今回ほとんどの訪問先で相談を受けたのが土壌や作物の病気、生育障害の問題と、その早急な解決方法。「バナナが途中で枯れ始める」「パイナップルの色が出にくい」「切り花の日持ちが悪くなった」など多数寄せられました。当地では連作障害などが十分に理解されておらず、課題解決には少し時間を費やすでしょう。

 今回の海外現地訪問で見えてきたのは、日本各地でも課題となっている、土壌環境バランスの不均衡。この問題は、海外でも同様な課題として難しく、有用な解決法が見いだされていないのが現状です。私も日々、研究を重ね、生産者に寄り添える取り組みを今後も続けていきたいと考えています。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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