【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.107(2/7号掲載)

ドクター古藤アイキャッチ

野菜の貯蔵方法

 秋冬野菜の収穫ピークのこの時期は「ダイコンのよ~採れたばい」「サツマイモの形の悪かあ~」「キャベツの固かあ~」など、さまざま声を聞きます。

種をまいたり、苗を植えつけたりした後、成長した野菜の収穫は、どんな形であろうと格別にうれしいですね。そこで、よく相談をいただくのが「収穫した野菜や、直売所で買った野菜を新鮮に保つためにはどのように保存すればよいのでしょうか?」というご質問。

 野菜の新鮮さを長持ちさせるための貯蔵条件として最も重要なのが温度と湿度です。貯蔵に最適な温度や湿度は、表のように野菜の種類によって異なります。春夏収穫野菜のピーマン、オクラ、トマト、キュウリ、ナス、カボチャ、秋冬収穫野菜のショウガ、サツマイモなどは、冷やし過ぎると低温障害を受けるので注意が必要です。ほとんどの野菜は高湿度での貯蔵が適しており、ポリ袋のようなプラスチックフィルムで包装するのがよいのですが、タマネギ、ニンニク、カボチャ、ショウガは乾燥気味の環境が適しています。

 野菜は老化ホルモンとも呼ばれるガス状の植物ホルモン「エチレン」を生成します。完熟トマトのようなエチレン生成量の多い野菜と、エチレン感受性の高い野菜(ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリー、レタス、ニンジン、キュウリなど)を一緒に包んで貯蔵しないように注意すれば、さらに新鮮さを長持ちさせることが可能です。また、冷凍保存は野菜の栄養価や健康機能性を保つための良い方法です。ホウレンソウやサヤインゲンのように冷凍・解凍しても食感が変化しにくい野菜は、まとめてゆでた後、食べきれない分は冷凍保存するとよいでしょう。

 また、常温保存に向いているのは、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモなどの芋類や、タマネギ、ゴボウなどの根菜類。風味を長持ちさせるため、土や泥がついているものは水洗いせずに、そのまま保存します。いずれの野菜も直射日光は避け、風通しの良い場所に置きましょう。ただし、高温多湿な夏期は常温保存に適さないので、冷蔵保存をおすすめします。

 プロの生産者は1~2坪程度、業務用冷蔵庫や予冷庫などを設置されています。貯蔵した野菜の計画的な出荷が可能ですが、一般家庭の方は、なかなかそうはいきませんね。

 ちなみに、冷蔵庫の機種で異なりますが、冷蔵庫の温度帯目安は、冷蔵室が約3~5度、冷蔵室のドアポケットが約6~9度、野菜室が約7~10度。特にドアポケットは軟弱系の葉物野菜がおすすめです。タマネギは新聞紙に包んで野菜室へ。レタスは新聞紙で包んだあとポリ袋に入れ野菜室に入れておくと、鮮度が落ちにくく、比較的長く貯蔵できます。

 昔の農家さん家には、床下に大きい穴を掘り、1年を通して変温しにくい「堀がま」で、収穫した野菜類を効率よく貯蔵されてあったようです。

 冷蔵庫が無かった時代は、夏涼しく、冬温かい地中や土壁でできた蔵、もみ箱、米びつ、吊るし柿など、自然体の中で効率よく、穀物類やイモ類、果実の加工品などの貯蔵や保存をされていました。

 近年の気候高温化が作物の栽培や生育に影響している中、貯蔵技術の向上も重要な食料自給の糧となるでしょう。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

糸島新聞ホームページに地域密着情報満載

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

目次