作物の高温対策 Part.1
2月18日は二十四節気の「雨水」。文献で調べると、降る雪が雨へと変わり、雪解けが始まる頃。山に積もった雪もゆっくりと解け出し、田畑を潤し、昔から雨水は農耕を始める時期の目安とされてきたとされています。
直売所出荷者の方をはじめ、家庭菜園の方々も「寒か~」って言っとられんですね。天気が良く、土が乾いた状態は絶好の土づくりのタイミング。バレイショ種の植え付け、春ニンジンやサラダゴボウなどの根菜類の種まきは、スタートを切っています。
ただ、私が懸念しているのが作物の生育期の高温の影響。昨年末のキャベツやハクサイ、ブロッコリーなどの野菜類をはじめ、ミカンなどの果樹類に高温障害の症状が出て、価格が平年より高かったのは記憶に新しいと思います。
では、具体的にどのような症状がでるのでしょうか。キャベツやレタスなどの葉菜類では葉がしおれ、結球するものは小球になります。トマトやメロンなどの果菜類では花が少なく落花が増えます。果実は肥大せず小果となり、糖度も不足。ダイコンやニンジンなどでは根菜類では肥大が不足します。果樹では日焼け、着色不良が起こります。
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糸島のプロの柑橘(かんきつ)生産者は「昨年のミカンの日焼けはひどかったぁ。出荷できるとも減って、がっかりやった」と嘆いておられましたね。
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高温障害がどのように引き起こされるのか、実際のところ、完全には分かっていないのが実情です。ただし、次のようなさまざまな要因が絡まりあっていると考えられています。
◎光合成が阻害される
あまりにも強い日光を受け続けると植物細胞の温度が上昇します。すると植物は葉の表面にある気孔を閉じて蒸散による水分減少を防ごうとし、結果、二酸化炭素の取り込みが減り光合成による糖分の生成が阻害されてしまう。
◎糖分の過剰消費
夜間に高温が続くと、日中に生産した糖分を呼吸で多く消費してしまい、健全な成長ができなくなります。果実や穂に送る糖分も減少して品質低下につながっているのではないか。
◎根からの吸収低下
さらに、根からの水分や養分の吸収は温度の影響を強く受けます。土壌の湿度が過度に高いとき、あるいは乾燥しているときに高温ストレスが加わると根腐れや水分吸収阻害を引き起こしてしまいます。
昨年の春から晩秋まで、異常に気温が高く、追い打ちをかけるように夕立も少なく、高温乾燥状態が長く続きました。ちなみに昨年、太宰府市は「日本一暑さが続く街」と呼ばれました。気象庁によると、昨年8月27日までの猛暑日連続日数は40日で、全国の最長記録を更新しました。また、年間の猛暑日数は62日で、国内の歴代最多記録を更新したとのこと。地形の要素も大きくかかわっているのでしょうが、夏季の気温が高くなってきているのは間違いなさそうです。
次回は、確実とは言えないものの、今だからこそ、私たちができる作物の高温対策をご紹介いたします。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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