作物の高温対策 Part.2
先週のコーナーで、作物の高温による生育障害などを紹介いたしました。今回は、障害をできるだけ防いでいくための方法を紹介いたします。
本来、早生系のキャベツやブロッコリーなどは、8月の猛暑の合間に種をまき、育苗。9月に苗定植することで、11月には大玉となり収穫ができていました。
しかし、昨年は、盛夏期から晩秋にかけて気温が高く推移し、生育のスピードが早まったため、玉が大きく太らず、小玉で重量も軽めでの収穫を余儀なくされたようです。
高温に強い作物栽培の方法について、確実な答えは出ていませんが、私の経験値から、まずはしっかりした根を育てることからはじまるのではないかと考えています。

元気な生育をしている作物の根に共通していることは「大きい根」「根毛が発達している」「根の量が多い」「白い根が伸長している」などです。その発達した根は、水分管理能力に優れています。
深く広範囲に根を張ることで、乾燥した土壌からも効率良く水分を吸収したり、限られた水分を効率的に利用したりし、生育に必要な水分を確保するなどの効果が期待されます。
それでは、しっかりした根を育てるにはどうすべきか。まずは、常に新鮮な酸素が根に届くことが重要です。排水性が良いことに加え、土の粒子の隙間が適当である(専門的には団粒構造になっている)通気性の優れた土は、根の発達に重要な要素です。
土づくりとしておすすめなのが、植物繊維質をたっぷり含む堆肥。家庭菜園者では「腐葉土」。直売所出荷者などでは「バーク堆肥」。ともに植物性繊維質をたくさん含んでいるので、土の中に空気の層を増やしてくれます。与える目安は、おおむね1坪当たり7キロ、または15リットル。堆肥系は販売時、重さか容量で表示されていますので、参考にしてください。
次に、根を張らせる養分の補給。この園芸塾でも度々紹介している「けい酸カリ」。徐々に溶けて長く効くため、根が丈夫になり、作物が健全に育ちます。1坪当たり80~100グラム目安で、堆肥と一緒に、土に混ぜ込むと良いでしょう。

最後に裏技。「クエン酸で発根促進剤」。市販クエン酸を水に溶かします。一般的には、1リットルの水に対して10~20グラムのクエン酸を溶かすのが適切です。この液体を定植した苗などの株元に、直接流し込みます。与える目安は、薄めたクエン酸水を1株当たり500ミリリットル目安。クエン酸の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。


何しろ自然相手の手法であって、おすすめした方法が暑さに強い作物作りのすべての解決策になるとは思っておりません。しかし、ただ一つだけ言えることは、確実に栽培方法に変化または対策を施していかないと、今までの栽培方法では、夏の生育が向上するとも思えません。
今後、さらに私なりに仮説をたて、一年を通し、天候、病虫害などの環境ストレスに強い作物作りの研究を重ね、皆様にご提案していきます。また、逆に皆様から「この方法ならどう?」といった情報がありましたら、どしどしお寄せくださいませ。お待ちしております。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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