「とまり大学」でプレイベント
九州大学伊都キャンパス南側に隣接する糸島市泊周辺地域で、地域の多様な人々と共に進めるまちづくりを目的とした「糸島インクルーシブ・アートヴィレッジ・プロジェクト」(九州大学大学院人間環境学研究院)が始動している。この一環として、地域に集う多様な人々が交流しながら学び合う「とまり大学」が立ち上がり、2月22日には泊一公民館でプレイベントが開催された。
プレイベントでは、地域の魅力を子どもや学生の視点で発見する「地元学」の報告会と、美術家・南条嘉毅氏の企画した取り組みが行われた。地元学の活動は、教育学部の学生たちが昨年6月から半年かけて実施。学生が地域を歩いて発見したことに加え、地域の子どもたちが自らの視点で地域を紹介した内容を「子ども地元学」としてまとめ、公民館に掲示した。同学部の岡幸江教授は「歩いてみると家庭菜園を広く手掛ける家庭が多く、お裾分けや物々交換が活発に行われている。この『家庭菜園コミュニケーション』が地域の特色なのではと感じた」と語った。

また、南条氏の企画「タイムスリップカフェ」が開かれ、参加者が思い出の品を持ち寄り、それにまつわるエピソードを語り合うことで、参加者同士が交流を深めた。
さらに、イベント当日から月末にかけて、泊一公民館前から昨年開校した糸島特別支援学校へ向かう道路沿いには、「とおりで夢に逢(あ)う~ゆいの旗~」と題したカラフルなのぼり旗「ゆいの旗」が設置された。同校開校時に、児童・生徒と制作したモニュメント「夢の翼」を基に、南条氏がその一つ一つの羽のデザインを旗として新しい形で表現したもの。同校の清水満校長は「この旗は、地域に開かれた学校を目指す思いを表現している」と話した。

泊一行政区では、新たに250区画の戸建てや商業施設用地の造成が進んでおり、留学生や外国人研究者を受け入れるための「糸島市九州大学国際村構想」も進行中だ。文化交流の場も積極的に整備され、急激な変化を迎えている。こうした中、長年この地域に暮らしてきた住民と、大学関係者、外国人、特別支援学校関係者、新規移住者が交流しながら共に豊かに暮らしを築いていくことが重要なテーマとなっている。
泊一行政区自治会の田中康太会長(72)は「この1年で地元を舞台にさまざまな取り組みが行われ、驚くことばかりだった」としながらも、「新たな視点を取り入れながら、まちづくりの手本となることができたら」と期待を寄せた。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)