いよいよ、新年度が始まった。4日は二十四節気の「清明(せいめい)」。江戸時代に出版された「こよみ便覧」はこう解説する。「万物発して清浄明潔(せいじょうめいけつ)なれば 此芽は何の草としれる也」。明るく生き生きとした季節の中、草木が芽吹き、その種類が分かるようになってくるのだと。社会に一歩を踏み出した新社会人や入学式を迎える新入生たちのすがすがしい気持ちを表しているかのようだ▼1年を春夏秋冬の四つの季節に分け、さらにそれぞれを六つに分け、季節を表す言葉にした二十四節気。それを約5日ごとに3等分して季節の変化を表現したのが七十二候(しちじゅうにこう)。清明の期間中、最初に始まる七十二候は「玄鳥至」。「つばめきたる」と、趣深い読み方をする。冷たい北風の季節が去り、南東から穏やかに吹いてくる「清明風」に乗り、ツバメたちが南国から飛来する▼一方、ツバメたちと入れ替わりに北国の春を目指して旅立つ鳥もいる。9日からの七十二候が「鴻雁北」。「こうがんかえる」と読む。秋から冬にかけて日本で暮らした雁たちは、シベリアなどへと渡って子育てをする▼清明が始まる4日は実におめでたい日ともされる。「幸せの日」だ。3月3日の桃の節句と、5月5日の端午の節句の中間に当たることから、女子と男子が歩み寄る日とされ、それぞれの子(し)を合わせて「幸せの日」になったとも。「し」という響きの受け止め方次第で、幸福感に満ちた日となる▼清明の期間中、三番目に巡ってくる七十二候は「虹始見」。「にじはじめてあらわる」と読むのだそうだ。日差しが弱まってきた11月下旬の「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」以来、見かけなくなっていた虹がようやく大空に現れるようになってくるころ。昔の中国では、鮮やかに弧を描く虹は、空を飛翔する龍と思われていたという。新漢和辞典新装大型版で虹の字の成り立ちを調べると、「虫」はへび、「工」にはつらぬくとの意がある。空をつらぬく大蛇(龍)という意味で漢字を構成したのだろう。希望の象徴ともされる虹を思い描き、しっかりと歩んでいく季節にしたい。
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