今年の「母の日」のプレゼントは、母親の好物のお菓子「丸ぼうろ」だった。例年は夏服を贈るのだが、今年は高齢で背中に痛みが出て長期入院しているため、お見舞いの気持ちを込めての贈り物にした。しっとりとしてやわらかく、素朴な味わいの銘菓を口にして、にっこりとする母親を見つめ、なんだか、こちらもうれしくなった▼5月の第2日曜日にお祝いをする母の日。この記念日の発祥は米国とされる。ウエストバージニア州出身の女性、アンナ・ジャービスが120年ほど前、母親の5月の命日に合わせて行なった追悼式で、白いカーネーションを捧げたのが始まりという。アンナの母親は、南北戦争が起きた時、双方の負傷兵を献身的に看護し、戦争終結後は催し物を開き、かつての敵同士を結びつける平和活動を行った。母の恩の深さを人々がしっかりと意識する日を設けたいというアンナの願いが全米に広がり、1914年に米国の記念日として定められた▼アンナにとって「母の日」は、子どもが自分の母親を祝うための日。このため、英語では「Mother‘s Day(マザーズデー)」と、マザーは単数形の表記。ただ、現在の米国では、すべての母親に対し感謝の気持ちを表す日になっているという。「Happy(ハッピー) Mother‘s Day!」と声を掛けて祝い、みんなが母親たちを讃える▼世界では、その国ならではの母の日の祝い方がある。ユニークなのはフィンランド。母の日の早朝に、父親と子どもが朝食を作り、母親のベッドに届けるという。そして、プレゼントは白い可憐な花々。長い冬が終わり、野山にいっせいに咲き誇る春の花を摘んできて、メッセージカードと一緒に手渡すのだそうだ▼「本当においしかったです。ありがとうございます」。ベッドに座って丸ぼうろを味わい終わった後、やけに丁寧な口ぶりの母親。家族と一緒に過ごしているときが何よりも幸せと、伝えようとしているかのようだ。和やかな表情には、家族への感謝の気持ちがあふれていた。思い出深い日となった。
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