【糸島市】「8の日」にビーチクリーン

活動5年目、「新しい」を入り口に

 糸島市で環境再生プロジェクト「ウミネコヤマネコ」を主宰する中込エリカさんは、毎月8日に、糸島市志摩の大口海岸で、SNSでの呼びかけで集まった人たちとともに、浜辺のごみを拾うビーチクリーンを続けている。

昨年12月のビーチクリーンの様子(後列左から2人目が中込さん)

 真っ青な空が広がった今月8日、潮がどんどん引いていくタイミングで、普段は立ち入れない岩場も姿を現した。この日は10人が参加。大きな岩の隙間に溜まった大物のごみを拾うなどして汗だくになったが、作業後の、日差しを受けてきらめく美しい海に、参加者からはため息がもれた。

 「外国語のごみが多い」との声に、中込さんは「海はつながってるからね。逆に、日本からのごみはハワイまで届いちゃってる」と応じる。地上で捨てられたごみは、河川を通じて海へと流れ込む。日本の海岸には外国からのごみが多く漂着する一方で、日本から出たごみもまた黒潮に乗り、太平洋の中央部へと運ばれていくという。

 「海を漂うごみのうち、浜に打ち上がるのは全体のたった5パーセント。残りは海中で、なかなか分解されず海底を漂っている。だからこそ、目の前の浜に打ち上がったごみには、『ありがとう、打ちあがってくれて!』という気持ち。海底に沈んでしまったものは、拾いたくても拾えないから」と屈託なく笑う。

大物のゴミを工夫して運ぶ参加者

 中込さんが環境問題に関心を持ったきっかけは、自然に負荷をかけない農業だった。東京で働いていた2011年、東日本大震災の年に第一子を授かった。食や命について考え抜いた末、思い切って糸島市へ移住。それまでの美容業界から一転、自然農の世界に飛び込んだ。畑では日本ミツバチも飼っていたことから、自然界におけるハチの役割に感銘を受け、8(ハチ)の日を定例にした。

 その後、森林の環境問題に関心を持つ仲間と出会い、「ウミネコヤマネコ」を立ち上げた。「とにかく敷居を低く。より多くの人に、『楽しそう』『気持ちよさそう』と、気軽に参加してもらうことを大切にする

 SNS等で広く呼びかけ始めたのが21年。最初は志摩の野北海岸でスタートし、飲食店から焼き菓子や飲み物の提供を受けたり、浜辺でのミニイベントを開催したり、多いときには80人を超える参加者が集まった。現在は大口海岸に場所を移し、大雨や暴風の日を除いて「8の日」を欠かさず続けている。

 「私たちの活動は、針の先でつついたような小さなもの。でも、一度でもごみを拾った人は、もう簡単に捨てる人にはならないと思う

 活動5年目を迎えた今も「楽しさを入り口に、1人でも多くの人にビーチクリーンを〝楽しんで〟もらいたい」と当初の思いは変わらない。

糸島新聞社ホームページに地域情報満載)

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この記事を書いた人

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