太平洋戦争末期、多くの住民が地上戦に巻き込まれ、軍人・軍属と合わせて20万人が亡くなった沖縄戦。その戦闘の終結から23日で80年となった。沖縄県が「慰霊の日」と定めるこの日、同県であった沖縄全戦没者追悼式に合わせ黙とうを捧げた。そして、ある歌のCDをかけた▼静かに聴き入ったその歌は、沖縄出身の3人組バンド、ビギンの「誓い」。20年ほど前、夏の甲子園の試合結果を伝えるテレビ番組のテーマソングとなった。自分探しを続けて葛藤する青春の切なさ、そして、新たな世界へと旅立つ決意が力強く表現され、若者の心を打った。ただ、何度も聴くうちに平和を守る「誓い」の歌だと受け止めるようになった▼小欄で2年前、ザ・ブームの大ヒット曲「島唄」の歌詞はすべて暗喩で、沖縄戦の悲劇と平和への願いが読み取れる歌詞であることを紹介した。ビギンの「誓い」も、沖縄戦に関係する直接的な言葉は出てこない。ただ、一つ一つフレーズを口にすると、沖縄戦の犠牲者に向け、平和への歩みを続ける約束をしているのだと感じさせられる▼ビギンの3人が沖縄戦にどう向き合ってきたのか調べてみた。3人は「慰霊の日」翌日の24日を「うたの日」とし、この日以降に沖縄県内で「うたの日コンサート」を行っている。今年は28日に開き、25回目の節目。公式サイトで、ボーカルの比嘉栄昇さんが「うたの日」について説明している▼沖縄は「うたの島」と呼ばれるほど歌が暮らしに根付き、お世話になっている歌に感謝し、お祝いをするという思いを込めているのだという。ただ、沖縄戦の時、人々は切っても切り離せない歌を歌えなかった。防空壕(ごう)や山に逃げ込んだ人たちは歌うことを禁じられた。「だからこそ終戦の時には痛みと悲しみを抱えながらもうたえる喜び踊れる嬉(うれ)しさを感じられたはずです」と、比嘉さんは記す。「誓い」の歌詞は、無くしてしまってから気づくものと、無くさずに気づかないままでいるものがあることに触れる。それは、まさに平和の尊さということであろう。
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