【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》「あんぱん」と「フォレスト・ガンプ」

まち角アイキャッチ

国民的人気キャラクター「アンパンマン」の生みの親、やなせたかしさんと妻の暢(のぶ)さんをモデルにしたNHKの朝の連続テレビ小説「あんぱん」。今田美桜さん演じるヒロインが、いつも元気よく走っているシーンがとても印象的だ。前向きな気分にさせてくれるヒロインの走る姿が見られないときは、ヒロインに何か問題が起きている。そんなドラマのつくりだ▼主人公がずっと走り続ける物語として心に残るのは映画「フォレスト・ガンプ」(1994年公開)。公民権運動、ベトナム戦争、ヒッピー運動…。主人公のフォレストは、激動した1950~80年代の米国の現代史を走り抜けていった。あんぱんのヒロインもまた、戦前から、苛酷な戦中、そして戦後の日本をひたすら走る▼「走る」場面には、どんな思いが込められているのだろうか。フォレスト・ガンプの日本語タイトルに「一期一会」のサブタイトルが付いている。一期一会は、茶道の精神性を説いた言葉。一期とは、仏教用語で一生涯を表す。そして、一会はただ一度の出会い。茶会に臨む相手と会えるのは生涯で一度きりと思い、心を尽くして交わるという心得を教える▼この言葉を生き方という視点でとらえると、「今この瞬間」は、再び繰り返されることはない。だからこそ、このとき、このときを精いっぱい大切に生きていこうという精神へとつながっていく。どんなときも走り続けたフォレスト。彼にとって「走る」とは、幼い頃から愛し続けた女性のために、ただ、ただ今を大切に生きていることを表しているのだと思う▼あんぱんのヒロイン。ドラマのホームページを見ると、タイトルに「“逆転しない正義”『アンパンマン』にたどり着くまでの愛と勇気の物語」という一文が添えられている。軍国主義から民主主義。終戦を境にして、正義は突然、逆転した。正義は不確かなものだ。だが、「逆転しない正義」はある。アンパンマンが生まれていく軌跡により、それが鮮明になっていくのだろう。「今この瞬間」を意識しながら、これからもヒロインの走る姿を見つめたい。

糸島新聞ホームページに地域密着情報満載)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

目次