栽培セミナーでのQ&A
7月~8月にかけ、各JAの野菜栽培グループや各地の直売所、道の駅では、秋冬野菜の栽培講習が実施されています。私も幸い12カ所でお話をさせていただく機会がありました。秋冬野菜栽培で、技術的に重要なポイントや有望な品種の紹介などを織り込み、解説しています。

その中で、真っ先にいただく質問が「古藤さん、この猛暑と雨不足で、キュウリやらトマトとか、野菜の太らんどころか、弱ってしもうとる。どうげんかならんね」という切実なご相談。確かに地産地消を推進している各地の直売所などでは出荷野菜が品薄の上、価格が高めに推移しているようです。この高温少雨対策は、そう簡単に解決する問題ではなく、私の宿題としています。

そんな中、今回、セミナー時に寄せられたご質問、ご相談から抜粋し、考えられる対策、回答をしてみたいと思います。
Q1 昨年、ハクサイが株張りは良いのに結球しなかった。自分で育苗した苗です。種まきも適期だったと思います。
A ポイントは適期の種まきと株張りが良いのに結球しなかった、ここですね。
原因の一つは種まきの適期。ここ数年の初秋の気温は、かなり高めに推移しています。私もハクサイは農業暦の白露(今年は9月7日)頃に種まくのが基本と教わり、そのように実践しましたし、すすめてもきました。しかし、近年の9月上旬は、夏が延長したような気温で、若干朝夕の涼しさは感じられるものの、日中は夏。やはり、種まき時期を少し、遅らせる必要もあると言えます。プロの生産者は専用の育苗施設を駆使し、徹底した生育管理をされていますが、施設を持たない方は、1週間を目安に播種時期を遅らせることにより、高温ストレスから解放された健全育苗に近づくと言えます。
二つ目は、株張りは良いとのことで、基肥や追肥はバランスの良い施肥だったと言えます。相談者の方は、土がやせていると思い、牛ふん堆肥と鶏ふんを多く与えたとのこと。なるほど、ともにゆっくり肥料効果が現れる「チッソ成分」を多く含んでいるので、ハクサイが栄養過多になり、外葉がしっかり太り、芯の結球がしにくくなったと考えられます。
そのほか、苗定植後の強いストレス、例えば、「土の過乾燥、逆に降雨続きで、根の発達が遅れた」「暴風雨で株元が揺らいで活着が低下した」などの原因で結球しにくくなります。

Q2 ダイコンの芯がスカスカしておいしくなかった。見た目はスーパーで販売されているのとかわらない。
A 抽苔(ちゅうだい)(とう立ち)すると硬くておいしくありませんが、お話を聞くとそうではないようです。そこで、考えられるのが、ス入りではないでしょうか。
ス入りは根の老化現象の一つで、肥料切れや急激な肥大が主な原因です。ダイコンが大きくなるほど、ス入りの傾向が強く、肥料は切らしてもダメですが、収穫前に急に肥料が効いてしまうのも問題です。割れや腐りの原因になってしまいます。そのため、与えた追肥などが収穫まで緩やかに肥料が効いている状態にしながら、適期収穫に努めてください。

まだまだ、たくさんのご質問を寄せられました。皆さんも「どうしたものか」と思ったときは、ご遠慮なく相談してください。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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