最高裁判決 元係長らの請求棄却
糸島市消防本部 パワハラ訴訟
糸島市消防本部で訓練中、部下にパワーハラスメント行為を行ったとして懲戒免職と停職6カ月の処分を受けた元係長ら2人が、処分の取り消しなどを求めた訴訟の上告審判決が2日、最高裁第3小法廷(石兼公博裁判長)で言い渡された。最高裁は、市の処分は違法だとして処分を取り消した地裁と高裁の判決を破棄し、元係長らの請求を棄却。裁判官5人が全員一致で懲戒処分は適法であるとの判断を示し、糸島市側の逆転勝訴が確定した。
同裁判を巡っては、消防本部の若手職員がハラスメントなどを理由に相次いで退職しているなどとの告発が糸島市にあり、2017年3月に市が元係長らを処分。市の調査の結果、元係長らは部下に対し、鉄棒にかけたロープで体を縛って懸垂させ、力尽きた後も数分間宙づりにする行為や、訓練に参加しなかったペナルティーとして腕立て伏せ100回を命じたり、さらには暴言を浴びせたりしていたことなどが認定された。市はこれらをパワーハラスメントに当たると判断し、懲戒処分を行った。
元係長らは処分を不服として提訴。1審の福岡地裁判決(2022年7月)は、「元係長らの一部の指導や訓練は不当だったり過剰だったりした」としたうえで、行為の程度などを考慮して、市の処分は「重きに失して社会観念上著しく妥当性を欠き違法」と指摘。懲戒免職処分と停職処分を取り消す判断をした。続く2審の福岡高裁判決(2024年1月)も取り消しを支持していた。
糸島市は、最高裁に上告。最高裁では、市の懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用(らんよう)した違法なものであるか否かが争点となった。
最高裁第3小法廷は、元係長らによる部下に対する一連の言動について、職場での優位性を背景にした2人の行為は、指導の範囲を大きく逸脱し、部下らに恐怖感や屈辱感を与えるもので不適切であると指摘。さらに「火災現場などで活動する消防では、職員間の緊密な意思疎通が重要であり、2人の行為が組織の規律や秩序を乱した悪影響は見過ごせない」として、市の行った懲戒処分は裁量権の範囲内であり妥当であるとの判断を示した。
月形祐二糸島市長は判決を受け、「長期にわたる裁判となりましたが、最終的に市の主張が認められたと受け止めています。同様の事案が起きないよう、市を挙げて良好な職場環境づくりに、引き続き取り組んでまいります」とのコメントを出した。
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