株式会社welzo㊦ 研究農場農場長 尾崎剛教さん(50)
このコーナーは、九州大学のインターン生が糸島エリアで事業活動している企業や団体を取り上げ、魅力を紹介しています。文学部1年の角田真都が前回に引き続き、農園芸の専門商社「株式会社welzo(ウェルゾ)」の研究農場(福岡市西区今津)農場長の尾崎剛教さん(44)に、九州大学と連携して進めている革新的な農業技術の開発についてお話をうかがいました。

-人工知能(AI)を使った作物の自動栽培システムを開発されていますが、どのような展望を持って取り組まれていますか。
「自動栽培システムで取り入れている特徴としては、地面から離して育てる高設ベッドで栽培をしていることが挙げられます。高設ベッドを使うことで人工培養土を使った栽培などを行うことができ、どこでも均一な栽培を可能にします」
-経験の浅い新規就農者にとってもメリットがありそうですね。
「新規就農者は、条件が良くない土地で農業を始めるケースがあります。土壌の環境をうまく整えられないために収益が上げられず、離農する人が多いことが問題となっています。われわれが配合し開発した人工培養土を利用すれば、安定して作物を育てることができます。今は収集したデータを基にAIで学習を始めている段階です。そのため、今後さらにデータの蓄積を増やしていくことが課題となっています」
-植物の成長に不可欠な窒素の肥料を生産するための新たな製造技術の研究も九州大学と取り組んでいるそうですね。
「専門的にはなりますが、プラズマ技術を使い、空気中の窒素を使って肥料を造るというものです。この技術は、二酸化炭素を排出する工程がなく、環境負荷が少ないとされています。現在は輸入に依存している窒素肥料の原料確保でのリスクがなくなり、安定した国内生産につながります。この研究は手探り段階ではありますが、より良い肥料づくりのため、実験を続けていきます」
-研究農場では、地域の方との交流も行われていますね。
「キュウリの収穫体験をメインにして、研究農場での取り組みなどについて説明させていただいています。この土地は、地元の方々の信頼を得られるように努め、やっと借りることができました。私たちのプロジェクトは、周りの方たちの理解があってこそ行えるのです。私たちの取り組みを知ってもらうのは、とても大切です」
-今後のスマート農業の取り組みについて教えてください。
「研究農場で行った研究の成果を社会に広げていきたいと思います。実は、プロの農家とのつながりは少ないんです。今後は、農家の実情や課題を知り、農家の要望に応えられる研究成果を出していきたいと思います。自動栽培システムについては、キュウリ以外の作物での研究を進めていきたいと考えています」

取材を終えて
日本の農業の課題を踏まえ問題を解決していこうとする姿勢から、将来の農業に対する熱い思いを感じることができました。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)