アーティスト 大川 博

糸島・新田の田園から望む可也山は、古くから「甘南備(かんなび)」の山として人々に仰がれてきた。
田に水を引き、稲を育て、麦を実らせるその営みは、山に宿る神とともにある祈りの循環でもある。
春の曙光に始まり、夏の風、秋の実り、冬の茜へ――季節の光は田を巡り、人の暮らしを照らす。
前景の稲穂や麦穂は、風にそよぎ、まるで海面の波のように広がる。その風紋は、枯山水の砂紋にも似て、天地を結ぶ生命の呼吸を可視化している。
中景には家並みが連なり、背景には山の稜線が穏やかに浮かぶ。
可也山は、稲作と麦作の循環を見守る“土地の神の座”として、今も静かにこの地の営みを包み込んでいる。
八つの光景は、糸島に生きる人々の祈りと自然との共生を描いた「光の記憶」である。
(アーティスト・大川博)
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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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