パラクライミング レンジアンドパワー3クラス
糸島市在住の山下和彦さん(44)=平田機工株式会社所属=が、韓国・ソウルで9月に開催されたパラクライミング世界選手権で初優勝を果たした。山下さんは10月23日から同26日まで飯塚市で開かれた国際大会「IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025」にも出場し、クラス統合Bルートで2位と好成績を残した。
パラクライミングは、視覚障害や身体機能障害のある選手が、高さ12メートルから15メートルの壁に設置されたホールド(突起物)をつかみ、どの地点まで登れたかを競う。障害の種類や程度に応じて10クラス(男女別で計20クラス)に分けられている。

山下さんは、20歳のときのバイク事故で左肩を脱臼し、脱臼癖を治す手術の影響で肩の可動域に制限がある。世界選手権ではRP(レンジアンドパワー)3クラスに出場し、世界一の座をつかんだ。
山下さんがクライミングと出合ったのは、26歳のとき。友人がテレビでボルダリングを見たのをきっかけに誘われ、福岡市のジムで初めて体験。難易度の高いルートを攻略していく達成感に夢中になった。
人と競うのが苦手という山下さん。クライミングジムの経営やルート作りの仕事をしながら主に岩場を登っていたが、選手として活動を始めたのは23年3月から。先輩から「パラに出場したら日本代表になれるんじゃないか」と勧められたことがきっかけ。「日本代表になって世界でクライミングができるかもしれない」という思いが、山下さんを競技生活へと向かわせた。
今春から平田機工に所属し、現在は「選手一本」で練習に励んでいる。世界選手権は、今年度最大の目標だった。「5月のアメリカ・ソルトレイクシティで開催されたワールドカップで2位に終わってから4カ月間は、18年のクライミング人生で最も自分と向き合い、トレーニングを積んだ」と振り返る。
世界選手権では、ロープにつるされて降りてきた時点ではまだ順位が分からず、ヘッドコーチから1位だと告げられた瞬間、泣き崩れた。「うれしさもあったが、追い込んできた時間から解放されたという気持ちが大きかった」と語る。
10月24日、市役所を訪れて月形祐二市長に優勝報告を行った山下さんは、短期目標として「(過去に3位や予選落ちなど悔しい思いをしている)来年3月の日本選手権での完全優勝」、中期目標として世界選手権連覇、長期目標としては「もしRP3が2036年のパラリンピックに採用されたなら、パラリンピックで金メダルが夢」と語り、「多くの方の支えがあって挑む事が出来ていることを感謝している。長く競技を続けたい」と意欲を見せた。
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