【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.144(11/14号掲載)

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タマネギ栽培重要ポイント パート1

 タキイ種苗さん2025年「野菜に関する調査」結果によると、大人の好きな野菜トップはタマネギ。
理由は
 ①味が好きだから
 ②調理しやすい
 ③食べやすい
 ④栄養があると思う
 ⑤保存が効くから

-と続いています。その他好きな野菜のトップクラスは、サツマイモ、ジャガイモ、トマト、トウモロコシ、メロンなどが常連のようです。その中で、トマトやメロン、トウモロコシは、少し栽培が難しいグループですが、サツマイモ、ジャガイモは栽培も比較的容易で、家庭菜園者にとって人気です。今回は、同様に栽培が比較的容易で、人気野菜のタマネギ栽培に焦点を当てます。

 ただ、栽培が容易とは言っても、近年の春先の高温化はタマネギ栽培を難しくしてしまっているようです。例えば、球が太る前にネギ坊主(とう立ち)が出来ます。また、青々とした葉に突然、灰色のカビが表面に発生することもあります。見る見るうちに葉が黄変してしまう(べと病)葉がオレンジの斑点で覆われる(さび病)など生育障害や重度の病害などが原因で、うまく収穫できないなど悩みの種となっています。そこで、今回と次週に渡り、タマネギ栽培の重要ポイントをお伝えいたします。

タマネギの病害 イラスト・シンジェンタジャパン

 初心者の方も含め、まず重要なのがタマネギ苗の大きさです。大きい苗を早めに植え付けてしまうと、生育が良ければ冬の間に大きくなり、春の高温と長日条件がそろうと「とう立ち(抽苔(ちゅうだい))」しやすくなります。

 とう立ちすると花芽が伸びてしまい、球が大きくなりにくくなるため、失敗の原因となります。よって、理想的な苗の重さは、100本あたりの重さとして、多少太さにばらつきがありますが、300~350グラム程度が目安となります。逆に小さすぎると、冬季の寒によって、枯れる場合もあり、苗の大きさ、選択は重要です。

理想的なタマネギ苗の重さ150㌘/50本束 1本当たり3~4㌘

 次に肥料の与え方が重要です。ここが一番難しいところでもあります。タマネギも他の作物同様、生育するのにチッソリンカリなどの栄養素が必要です。他に石灰分に含まれるカルシウムマグネシウムなども生育を助けます。

 そこで、近年、生育上問題になっているのが、チッソ成分。チッソ成分は、タマネギの生育にとって、定植時期から収穫時期まで重要です。チッソ成分が少なすぎると、極端に生育が悪かったり、春先のとう立ち発生を助長したりしてしまうからです。チッソ成分のバランスが良いと、球太りから収穫後の貯蔵性も安定します。

 逆に、チッソ成分が多過ぎると、球の肥大や葉色が濃く一見、順調に育っているように見えます。しかし、球体内に余分なチッソ成分を含んでしまっていると、腐敗率が高くなったり、萌芽が早くなったりと貯蔵性低下の要因となってしまいます。

 それは、これまでにはなかった春先からの異常な高温によって、タマネギがどんどんチッソ成分を吸収し、ため込んでしまっているからと考えられています。まずは以上二つの条件、考慮してください。次回は応用編です。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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