アーティスト 大川 博

可也山へと続く一本道。
「道」は人生、「山」は目標、「田畑」は環境、そして「光」は希望。
そこに流れるのは、四季の光と人の歩み。
春の水張田に宿る誕生の輝き。
初夏の稲波を渡る風。
出穂の盛夏を過ぎ、秋には黄金の穂が頭を垂れる。
晩秋は大地が休むとき。
初冬には蒔かれた麦が青く芽吹き、
弥生にはその青麦が天を仰ぎ、
やがて春、麦は黄金に染まり、麦秋を迎える。
可也山は静かに見守り、ふもとの家並みは変わらず、
ただ、時の記憶だけが幾重にも重なっていく。
母の腕に抱かれた幼子のとき。
親に手を引かれ歩いた幼年のとき。
友と遊び、夢を語りあった少年のとき。
一人で歩き始めた青春のとき。
伴侶と出会い、家族を築くとき。
子を育て、自らも成長したとき。
そして巣立ちを見送り、静かな成熟のときを迎える。
自然の循環は人の営みと呼応し、
「生きる」という美しさを静かに語りかける。
季節と人生はひとつの円環を描き、
過去と未来、始まりと終わりが光の中でやわらかく溶け合う。
観る者それぞれの記憶に触れ、
懐かしさと再生の想いが、静かに胸の奥に灯る――。
(アーティスト・大川博)

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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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