西日本新聞セレクトモール
アーティスト、大川博さんによる本紙の風景画連載「糸島八景」で、「松陰越しの姫島」をテーマにした作品販売が西日本新聞セレクトモールで行われている。インターネットで通販が楽しめるショッピングモールで、電話でも受け付けている。

電子ペンで描いたデジタルペインティング。今回は、松林の中から望んだ姫島の心象風景を描いた9枚の連作。
デジタルペインティングをリトグラフ風に仕上げて額装。
100枚限定でエディションナンバーをつけ、落款を押している。
《価格(税込)》
1枚(額装)送料込み …1万2千円
4枚セット(額装は1枚のみ)…3万5千円
9枚セット(同) …7万2千円
ご購入の申し込み
西日本新聞セレクトモール
電話 092(558)8127(平日午前10時~午後5時)
※電話によるお申し込みは1月5日以降
URL セレクトモールのウェブ
―松陰越しの姫島―
松林の陰から遠く海を望むと、
そこに姫島は、常に同じ姿で浮かんでいる。
しかし光は移ろい、風は生まれ、止み、
雲は裂け、雨は去り、星は巡る。
この連作は、
姫島という「動かぬもの」を軸に、
一日の光と気配、そして人の内面が
どのように変化していくのかを描いた、
九つの時の断章である。
松陰越しに眺める風景は、
いつしか見る者自身の心象風景へと変わっていく。
1 暁稲

闇が最も深いとき、東の空にひとつの星が静かに輝きはじめる。
松林の向こうに浮かぶ姫島は、
闇と光、此岸と彼岸の境に佇むように現れ、
見る者の内奥へと、確かな方向感覚をそっと指し示す。
暁星は、目覚めに先立つ希望のしるしである。
2 朝靄(あさもや)

朝靄は、世界の境界を消し去り、
姫島と心をひとつの呼吸に結ぶ。
松陰越しに立ち現れるのは、
まだ名を持たない内なる風景である。
3 曙紅

朝霧が晴れ、
空はやわらかな紅をまといはじめる。
松林の奥に浮かぶ姫島は、
世界の一部として静かに息づいている。
曙の刻、
目覚めゆく心と風景が、
ひとつに溶け合う。
4 晴嵐

松林を抜けて届く光は、海に揺らぎを与え、
姫島を、「現実の風景」として立ち上がらせる。
晴嵐。
世界が今日という一日を始める、その最初の呼吸である。
5 風止(かぜやみ)

風はふと止み、
張り詰めた静けさに包まれる。
空と海は不自然なほど静まり返る。
松林の奥に浮かぶ姫島は、
静寂の気のなかで、
すでに変化を予感させる。
6 雷光

厚く垂れこめた雲と雨の底で、
天は一瞬、引き裂かれる。
松林の奥、闇に沈む姫島へと走る雷光は、
世界がまだ生きていることを示す。
自然がみずからの力を思い出す瞬間である。
7 清明

嵐が過ぎ去り、
世界は何事もなかったかのように澄み渡る。
松林の向こうに浮かぶ姫島は静かに佇む。
清明とは、
傷の記憶を抱えたまま、再び澄みはじめる瞬間。
8 黄昏

日が沈み、ゆっくりと静けさへ向かっていく。
松林の向こうに浮かぶ姫島は、
一日のすべてを受け止める存在として佇む。
ただ深く、成熟していく刻。
9 星巡(ほしめぐり)

夜は深まり、
星々は北極星を中心に静かな円を描いて巡り続ける。
松林の向こうに浮かぶ姫島は、
動かぬものとして、
ただその巡りを受け止めている。
星巡とは、
世界が始まりも終わりも持たず、
ただ在り続けるという事実を、
静かに思い出させる。
