【糸島市】「白糸の森」が最高賞

循環型実践の体験型観光農園

九州観光まちづくりアワード2025

 糸島市白糸で体験型観光農園「白糸の森」を運営する前田和子さん(70)と大串幸男さん(70)夫妻が、九州各地の優れた観光まちづくりを顕彰する「九州観光まちづくりアワード2025」の最高賞・大賞を受賞した。九州全域から64組のエントリーがあった中での栄誉ある受賞となった。

風渡る展望テラスで談笑する前田さん(左)と大串さん夫妻

 白糸の森は、2人が2018年に立ち上げた体験型観光農園で、事務局からの他薦を受けて同アワードに応募。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」を立ち上げた古宮洋二社長を審査委員長に、建築家や菓子研究家、編集者ら多彩な顔ぶれによる書類審査や現地視察を経て10組にしぼられ、その頂点に立った。

 白糸の森は、名勝・白糸の滝へ向かう山腹に位置する。2人は約1万坪の山林を少しずつ開墾し、無農薬・無化学肥料で野菜を育てながら、その景観を生かした展望テラスや、スギ林の中のツリーハウスカフェを整備してきた。収穫した野菜や果物を使ったうどん店やカフェの営業、加工品の販売も行い「この場所で育て、この場所で味わう」循環型の場づくりを実践している。

「再生と復活」テーマに ー前田さん・大串さんー

受賞報告と感謝の会

 12月3日、東京都内で開かれた表彰式を終え、糸島に戻ったばかりの2人は「思いを持って、できることをこつこつ続けていたら、こんな貴重な賞をいただけて本当にありがたい」と、興奮冷めやらぬ様子で喜びを語った。あわせて、地域の先人や日々汗を流してきたスタッフへの感謝の言葉を口にした。

 開業当初から掲げてきたテーマは「再生と復活」。佐賀県有田町で育ち、幼い頃から父とスギの枝打ちをし、大工のカンナがけに魅せられて建築士を目指したという大串さんにとって、豊かな森の再生は自身の原風景と重なる。一方、長年飲食業に携わり、地域の人々との関係を大切にしてきた前田さんにとっても、畑で採れたものを保存食にし、訪れた人に振る舞うことはごく自然な営みだった。「特別なことではなく、昔ながらの暮らしの知恵を丁寧に伝えていきたい。本物は残るし、残していく責任があると思っています」と語る。

 14日には、受賞報告と感謝を直接伝えようと、白糸の森で感謝の会が開かれた。これまで2人の歩みを見守ってきた友人や知人ら約80人が集い、喜びを分かち合った。前田さんの娘で、立ち上げ当初から夫と「白糸うどんやすじ」を切り盛りする房子さんは「順風満帆ではない中でも、母たちは結果を急がず、一日一日を大切に積み重ねてきた。白糸の森は、関わってくださった皆様やスタッフ一人一人の思いと時間によって育てられてきた場所」と感謝の言葉を述べた。また、前田さんを姉のように慕う江藤敏子さんも「すべて手仕事で、こつこつと続けてきた姿に心打たれる。この場所を次の世代へつないでいく家族の紹介もあり、とても感動した」と目を潤ませた。

感謝の会に駆け付けた友人らと乾杯をする夫妻(右)
夜に行われた感謝の会ではたき火が焚かれ、あたたかい光が満ちる白糸の森。
つきたて餅も振舞われた

糸島新聞社ホームページに地域情報満載)

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この記事を書いた人

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