「ホースセラピー」分野で活躍
今年の干支(えと)は「午(うま)」。古くから人の暮らしを支えてきた馬は、今もなお、その優しい瞳とぬくもりで人の心に寄り添い続けている。農耕や運搬の担い手として活躍した時代を経て、現代では馬を介して心身を癒やす「ホースセラピー」の分野でも力を発揮している。そんな「馬の持つ力」に魅せられ、海を渡って学びと経験を積み重ねているのが、糸島出身の河野裕里恵さん(31)。馬に導かれて広がった世界と、その歩みを追った。
糸島出身・河野裕里恵さんの「馬のいる暮らし」
裕里恵さんが馬に興味を持ったのは3歳のころ。佐賀市三瀬村のどんぐり村であったポニーの引き馬体験は、3歳以上が条件だった。誕生日を迎え、念願かなって初めて馬に乗った裕里恵さんは満面の笑み。母の尚美さんは当時を振り返り「自分より何倍も大きい馬を、全く怖がる様子がなくて。よくせがまれて連れて行っていた」と懐かしむ。

糸島市高田で生まれ育ち、休日は家族で野外へ出かけるアクティブな家庭環境だった。近隣に馬を飼っている人がいると聞けば会いに行き、中高生の頃には通学路沿いの馬小屋に立ち寄ってあいさつするのが日課だった。
高校卒業後は「福祉」と「馬」という二つの関心が合わさった専門学科を求めて関東の大学へ進学し、ホースセラピーを学んだ。当時の日本ではまだ知見が乏しい分野。海外文献を読み込むうちに「自分の目でいろんな実例を見たい」との思いが強まった。

そこで、大学卒業後に選んだのがワーキングホリデー制度。先進事例の多いヨーロッパへ渡り、フランス、ハンガリー、ポーランド、スペイン、フィンランドにそれぞれ1年ずつ滞在。リモートワークをしながら「馬のいる暮らし」にアンテナを張り、周辺国も巡った。「週末に馬のお祭りがある」「地域の居場所として開かれた乗馬施設がある」といった情報を手がかりに現場へ足を運び、取材を重ねた。ホースセラピーをはじめ、ヨーロッパの最新情報を、肩書の一つである「ホースジャーナリスト」として、馬の専門誌「UMA LIFE」やウェブ記事、自身のSNSなどを通じて発信している。

昨年6月、フィンランドから帰国した際は、世界各地で撮りためた「馬のいる暮らし」の風景を、福岡・佐賀のカフェで写真展として披露した。「ほっと一息つける空間で馬の写真に触れ『馬っていいな』と感じてもらえるきっかけになればうれしい」と話す。
日本では「競馬」や「乗馬クラブ」のイメージが強い馬だが、世界に目を向けると、その役割は実に多様だ。山から材木を運び出す作業馬として再評価されている地域もあれば、馬が引く移動式図書館で子どもたちに本を届ける国もある。警察騎馬隊として街中をパトロールする光景に出合ったことも。「馬がいると、人が自然と集まり、世代や立場の異なる人とつながることができる」。裕里恵さんは、各地で実感してきたその魅力を語る。
最近はオンラインでホースセラピーの勉強会を毎月開催し始めた。「いつか自分の学びを生かす拠点をつくりたい」と考える一方で、まだ見ぬ土地の「馬のいる暮らし」への興味は尽きない。次はどの国へ向かうのか。馬とともに駆け抜ける1年が、また始まる。
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糸島市図書館本館には、月刊雑誌「UMA LIFE」が寄贈されている。興味のある人は手に取ってみてほしい。
絵解き・北欧フィンランドにて。馬車など重い荷物を引く品種は体格がよく体重が重い スペインの街をパトロールする騎馬警察と。車や人混みにも慣れるよう訓練された馬たち
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)
