【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》「塞翁が馬」に思う幸せ

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 今年の干支(えと)「丙午(ひのえうま)」の丙と午は、ともに火の性質があるとされ、その力が合わさることから、エネルギーに満ちた年になるという。一方、丙午の年に生まれた女性は「気性が荒く、夫に災いをもたらす」という根拠のない迷信がある。少子高齢化が深刻化している日本の出生数に、こんな俗説が影響しないことを願っている▼丙午といえば、あるユニークなタイトルの本が思い浮かぶ。45年前に刊行された「人間万事塞翁(さいおう)が丙午」。放送作家や俳優、政治家と多才ぶりで知られた故青島幸男さんが初めて書いた小説。いきなり直木賞を受賞して話題となった。この小説は中国の故事「人間万事塞翁が馬」のパロディー。作品名を通し、この故事について知ったが、当時は学生で人生経験の浅さゆえ、気に留めることはなかった▼古代中国の哲学書に由来する故事。塞(とりで)近くに住む老人の馬が逃げ出し、老人は哀れむ人たちに「これは幸運を呼ぶだろう」と答える。逃げた馬はその後、足の速い良馬を連れて帰って来る。これを祝う人たちに、今度は「災いになるかもしれない」という。そして、老人の息子が落馬してけがをしてしまう。老人はこのとき「幸運が訪れるだろう」と言った。息子はけがをしたため、その後起きた戦争の際、徴兵されず、親子ともども無事だったという話▼人生の中で、何が幸か不幸か、予測できない。一見不幸に見えることが幸福に、逆に幸福に見えることが不幸になってしまう。人生を重ねるうち、誰もが経験する「塞翁が馬」。「いまは大変だが、きっといい結果へ導かれる」と、何度自分に言い聞かせてきたことか▼何が幸せなのか分からない。そうであるのなら、幸せを追い求めても意味はない。だから、いっそのこと割り切って「自分は幸せだ」と思うようにしている。毎朝健やかに目覚め、胸に手を当てて心臓の鼓動を感じてみる。体中に温かい血が巡っている。あまりにも当たり前のことだが、実はそれが最上の幸せなのではないだろうか。この幸せに気づけば、不幸を嘆くことはなくなっていくと思う。

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