急激な気温上昇の影響
3月5日は農業暦の「啓蟄(けいちつ)」。土中で冬眠をしていた虫たちが暖かい春の日差しの下に出てき始める頃。作物に目を向けますと、キャベツやブロッコリーなどの露地野菜も寒い冬を乗り越えて生育が加速していきます。
プロの生産者は、日が長くなり気温も上がってくることで「太りがよくなるもんなぁ」と話されます。とはいえ、徐々に気温が上がるのであれば、問題ないのですが、近年の3月は、最高気温が25度を超える日もあり、5月並みの気温を記録しています。こうなると野菜もたまったもんじゃありませんね。ぎっしり詰まっているはずのブロッコリーの蕾(つぼみ)が緩くなって黄色の小花が咲き始めたり、キャベツは普段と変わらない外見をしていますが、半分に切ってみると、芯の部分に蕾(球内塔立)が出来たりしています。

こうなってしまうと商品価値は、がた落ち。ブロッコリーは茎がかたくなり、蕾もゆでると柔らかすぎて食味が悪くなります。キャベツも同様にかたくなります。この時期が旬の菜の花も蕾に独特の苦みがあっておいしいのに、花がどんどん先急いでしまい収量減。3月の急激な気温の上昇は、アブラナ科野菜を中心とした露地野菜の栽培にとって大きな課題となっています。
一方で、広い田んぼを見渡すと、青々とした葉色の麦が立派に育っています。糸島でもビール原料用の大麦をはじめ、うどん用、パン用、ラーメン用の小麦が栽培されています。この青々とした麦。肥料だけでこのような美しい葉色をしているのでしょうか。麦が元気よく育っているのは、実は生産者のしっかりした管理があるからこそなのです。

1カ月前の一番寒さが厳しい時期に「麦踏」をすることで、ガッチリとした麦となっています。麦踏は、麦が3~4葉期を迎える1月上旬から2月中下旬にかけての厳寒期に行います。茎が立ち上がる前(節間が伸びる前)までに、土が乾いた晴れの日を選んで2~3回程度実施し、根の張りや分けつを促進します。霜柱で浮き上がった根を土に戻し、過剰な生育を抑え、寒さや乾燥、風による倒伏を防ぐ効果があります。特に冬の間の健康な成長を促し、収穫量を増やすための重要な管理作業です。
格言にもあるように「麦は踏まれて強くなる、人間も踏まれて強くなる」。私たちも、穏やかで過ごしやすい日もありますが、とても寒く凍えそうな日や暑くてどうしようもない日もあります。自然だけでなく社会もまた同じ。厳しい状況に対処できる術を身に付けるとともに、心の強さも必要ですね。踏まれて踏まれても、強くなるたくましい麦。私達も踏まれるほど強くなることを教訓にしたいですね。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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