アーティスト 大川 博

「春の兆し ― 可也山を望む ―」
加布里湾の向こうに可也山を遠望する丘陵の畑に、春の訪れを告げる菜の花が静かに咲き始める。
里山の向こうには穏やかな海が広がり、冬から春へと移ろう季節の境目を、やわらかな光がそっと照らしている。
糸島では、厳しい寒さがわずかにゆるむ頃、まず目に飛び込んでくる色がこの鮮やかな黄色である。
菜の花は、まだ姿を現していない春を誰よりも早く地上に知らせる存在だ。遠くに望む可也山は、その変わらぬ姿でこの土地の風景を見守りながら、繰り返される季節の循環を静かに語りかけている。
本作が描くのは、満開の春の華やぎではない。
春が生まれようとする、その直前のわずかな「兆し」である。
菜の花の光のような黄色、春の光を映す海の碧、そして山の静かな緑。
それらが重なり合う風景のなかに、糸島の自然がもつやさしい力が息づいている。
長い冬の静けさの先に、春の気配がかすかに立ち現れることがある。
「春の兆し ― 可也山を望む ―」は、加布里湾越しに可也山を望む糸島の風景の中に流れる季節のリズムと、この土地に宿る静かな美を描いた作品である。

(アーティスト・大川博)
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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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