アーティスト 大川 博
糸島半島は俯瞰(ふかん)すると、龍頭をイメージさせる。その龍の鼻の先に、奇勝の芥屋の大門がある。
芥屋の大門は、六角柱の玄武岩をくみ上げるかのようにして自然が作り上げた創造物。そこには、大きな洞窟があり、波が穏やかなときは遊覧船で入っていける。
竜宮城に続いているとか、天岩戸の入り口とか、元寇の際はこの洞窟から「神風」が吹き出し、元の大船団を覆したという伝説がある。
美しい海にそそり立ち、神の世界へ続く「神窟」とされる芥屋の大門。まだ、青暗い夜のとばりに空がおおわれている時、東の空に明けの明星が輝く。払暁、漁を終えた舟が静かに帰帆する。
夜が明けようとするとき、東の空はバラ色に染め上がってく。天女が天から舞い降りてくるような美しい光景である。日が昇ると、穏やかな空にカテドラルのような芥屋の大門が屹立(きつりつ)し、静かなエメラルド色をした海にその姿が倒影される。
空が橙色に染まるころ、海鵜(うみう)の群れが巣へと帰っていく。日が沈み、澄み切った芥屋の空を花火が彩る。花火が終わると、満天に星が煌(きら)めく夜になる。やがて、静かに月の光が芥屋の大門を照らし一日が終わる。
人の心を表すかのように、時の移ろいとともに表情を変えていく景色と、規則性を持った姿を太古より変えることなく、波に洗われている玄武岩の柱状節理。そんな大自然の「不易流行(ふえきりゅうこう)」を描きました。
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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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