卓球世界大会3連覇を目指す
パーキンソン病患者 二丈吉井の小山理恵さん
手足が震えたり身体のバランスが取れなくなったりする難病「パーキンソン病」を患う、糸島市二丈吉井の小山理恵さん(63)。2022年にクロアチア、23年にオーストリアであった患者の世界卓球大会に出場し、女子シングルスなどで優勝した。「卓球は生きる原動力。病気だからと沈んじゃいられない」。10月にスロベニアで行われる大会に向け、3連覇を目指し練習に励んでいる。
手足の震えなどから、パーキンソン病と診断されたのは57歳の時。「このまま何もしなかったら、10年後の私はどうなりますか」。主治医は「体が動かなくなり、寝たきりになる。ただ進行を遅らせるには運動が有効」と卓球を勧めた。
小山さんにとって、卓球は10歳から始めた親しみのあるスポーツ。唐津市内の小学校で教員として35年間働く傍ら、卓球の社会人チームをつくり、全国大会に出場した経験もある。
「卓球なら今までずっとやってきた。『ラッキー』と頭の中が弾けました」。世界大会もあるなら、出場して優勝を目指そうと、すぐに挑戦を決意した。
唐津市の老人ホームでパート職員として働きながら、練習を重ねた。ただ、薬が切れると全身の筋肉が固まり、足がすくんだり全身がだるくなったりする症状が襲う。それでも「ずっと続けてきた卓球を今こそ生かしたい」。病気だからと落ち込む時間はないと、卓球に向き合い続けた。
出場した「ピンポン・パーキンソン世界大会」では、同じ症状を患う海外の人と交流し、一気に世界が身近になった。若い頃から、一度は卓球でチャンピオンになりたいと願ってきた小山さん。ついに61歳でその夢を叶えた。
小山さんがもう一つ力を入れるのが、患者同士がつながる場所づくりだ。患者の卓球サークルをつくったり合宿を開いたりして、精力的に活動する。「歩きにくい症状が出て、家に引きこもってしまう患者もいる。悩みを共有できれば、不安は安心に変わるはず」と話す。
小山さんの活動はテレビや新聞でも紹介され、同じ病で苦しんでいるので話を聞いてほしいという声が多く寄せられたという。「誰にも話せず、一人で悩んでいる患者はとても多い。パーキンソン病に限らず、難病に悩む人たちがつながり合えるお手伝いをしていきたい」。
病気になっても、誰もがきっと輝ける-。小山さんはそう強く信じている。