【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.90(9/27号掲載)

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タマネギ栽培について

 近年は、タマネギ栽培についてのご質問が多く寄せられます。苗の流通が始まるのは、おおむね11月に入ってからですが、貯蔵性を求める品種は今から種まきが本格化してきます。そこで、栽培に関しての情報発信と留意点をご紹介します。

 「古藤さん、どうもタマネギの育たん。昔は、ちょろ~と石ばい(石灰)と肥料ば土と混ぜとって、苗さえ植えとけば、勝手に太って収穫できよりましたばい」とベテラン農家さん。確かに、作物の中では比較的育てやすく、そこそこの収穫が見込めました。もうそれは、過去のこと。以下のような栽培に関してのご質問が大多数です。

 「玉ねぎの不作が3年続いています。全体の三分の一ほどが細長い・小さい玉で、枯れて収穫になります。原因や対策を教えてください

 確かに、タマネギの栽培は、主産地においても、不作が続いています。原因は冬季の温暖化により、生育が前進傾向となり、とう立ち肥大不良、加えて「べと病」の病害発生拡大。生育不良とともに、収穫後の貯蔵性も低下し、流通量も減少しています。

 兵庫県、佐賀県など西日本地域の主産地では、栽培体系、防除方法の徹底などあらゆる対策を講じていますが、解決策の決定打は現段階では厳しい状況です。

 タマネギの生育不良、不作要因は「ボトリチス葉枯病」「べと病」の感染拡大によるものが大きかったようです。
その中で、対策方法の報告によると
◎病害発生圃(ほ)場での連作回避
◎育苗段階から定植後の生育初期段階での、1次感染の回避
◎可能な限りの苗の遅植え

ーです。

べと病にかかったタマネギの葉

 限られた菜園スペースだとどうしても連作になってしまいます。これは、直売所出荷者レベルの方も同様。作業性や水利、日照などの生育環境を考慮すると、どうしても同じ圃場での栽培になりがちです。本来、タマネギは連作に強い作物ですが、べと病の菌などは、土壌にすき込まれた葉などに胞子を残して潜伏しており、連作することで、その菌が、環境(湿度や地温など)が整うと活動を開始します。

 皆さんが入手されるタマネギ苗は、苗生産業者によって育苗されているときは、防除を必要最小限に抑えています。それは、薬剤コストや散布作業などの人件費などが、年々高くなっているためです。ですから、皆さんは、苗調達、移植後は有機、化学問わず、一次感染予防のための処方を行うべきです。

 もう一つの手段は、貯蔵性タマネギは、少し小ぶりの玉サイズになりますが、年明けに苗移植を行うことで、病害被害の発生率が低くなります。参考に適合品種の栽培カレンダーをみてください。

 タキイの中晩生種「ネオアース」は10月上旬播種、1月に苗定植可能な品種。現段階において、薬剤散布だけでは、病原菌感染の抑制に至っていないため、作型を考慮した栽培方法の実施によって、タマネギ重要病害を回避します。

 アドバイスとして、極早生品種は生育期間の関係から病害発生率が低い上、そこそこ玉が太り食味が良く、長期貯蔵が出来ないなどのデメリットはありますが、おすすめです。貯蔵性タマネギは前述のように、苗を遅く定植することで、成果率が高くなるので、考えてみてください。

 冬季から早春の気温、湿度が高くなっている昨今、できる限りの対策を講じないと、栽培も難しなってきています。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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