アーティスト 大川 博
樹齢400年あまりの大カエデが植わっている糸島市の雷山千如寺。カエデの寿命は一般的に200年ほどと言われ、およそ倍の寿命である。日々、僧侶の祈りの声を聴きながら、その枝を大きく伸ばしてきた。
春、大カエデは、大地に張った根から水や養分を吸い上げ、太い幹から枝葉に養分を行き渡させる。茂り始めた葉は薄緑色で、若々しさすら感じさせる。夏、青々としていた葉も、やがて、色を変えていく。葉を赤く染め上げるのは、幹を引き締めるような寒い日が続いてから。その紅葉はしばし時を忘れさせる。その鮮やかな葉も落ちていき、枝と幹だけとなる。
大カエデの移ろう様に、色即是空、そして空即是色を感じたとき、寺の杉木立に鎮座される五百羅漢像の心を思い起こす。
(アーティスト・大川博)
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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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