ベランダ菜園のポイント
糸島新聞社で連載の機会をいただいているおかげで、たくさんの方から「新聞よみよ~ばい」「参考にしよ~ばい」など、うれしいお言葉をいただき、励みになります。
その中で、マンションにお住まいの方から「少ないスペースで栽培できる野菜を紹介してくださいよ」と、ご相談をいただきました。
確かに、福岡市西部から糸島地域にかけて、急速にマンションなどが増え、ベランダ菜園も食と健康を体験できる立派な学びの場ですね。そこで、ベランダ菜園を長く楽しむためには、いくつかのキーワードがあります。
まずは、土。ベランダ菜園の方は、大きめのプランターに土を入れ野菜を育てますが、何度も種をまいたり、苗を植えたりして、収穫を繰り返すと、どんどん土が疲れていきます。畑で育てる場合は、堆肥や肥料など必要な要素を土とよく混ぜ合わせ、土を再生していきますが、ベランダ菜園では、そう簡単に土の入れ替えなどはできませんね。
そこで、土はしっかりこだわりを持つことが大切です。市販の培養土でも構いませんが、購入の際は、なるべく現物の土を触って、繊維質を多く含み、発酵臭など比較的臭気が少ないものを使用してください。ヘンな臭気がある培養土は、土の痛みや酸化が早く、後にうまく野菜が育つことができなくなる可能性があります。
二つ目は、秋冬野菜の種類。ダイコンやニンジン、キャベツなど最初に種まき、または苗を植え込んだあと、順調に生育したものは、収穫するとその役目を終えます。しかし、シュンギク、チシャ、脇芽を収穫するブロッコリー、カットしながら葉を利用するネギなどは、必要な分だけ葉をかきとり、再度成長した葉を収穫できるので、野菜栽培初心者にはおすすめの品種です。
三つ目は、疎植。プランターを有効的に使おうと、どうしても密植栽培になりがちです。密植栽培になると、受光不足、養水分の奪い合い、貧弱な成長となり、逆作用になります。なので、株間にゆとりを持った育て方が、求められます。
特に一押しが、正月での北部九州のお雑煮に利用する「カツオ菜」。風味があって、熱を入れても、青い葉は美しく、私も大好きな漬菜です。必要な分だけ、かきとることができ、少人数の家庭では、2株もあれば十分。おまけに年末年始のカツオ菜はそこそこの値段もするので、一石二鳥。育て方のポイントは、この時期には、必ず苗を植え付けておくこと。遅れるとなかなか太らず、正月に間に合わないことになりかねません。日照時間も短くなり、気温もぐんぐんと下がるこの時期からは、追肥には液体肥料が最適です。10日に一度のペースで与えると良いでしょう。
それと裏技。もしご家庭で、だしパックを使ってあれば、だしをとった後のパックを処分せず、カツオ菜の株元に1株当たり2個を目安に置いてください。だしパックの素材のカツオ節や昆布などの残った旨味の成分がカツオ菜に吸収され、さらに生育が良くなります。
カツオ菜は、カルシウムの含有量が多く、カロテノイドやビタミンCも豊富に含み、旨味を呈するアミノ酸の含有率が高く、さらに、強い抗酸化活性を有しており、その活性は加熱処理しても低下しないとのこと。
こんな素晴らしい栄養素をもつカツオ菜をベランダ菜園で楽しんでください。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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