課題の手作り堆肥
9月20日付のこのコーナーで、私が取り組む課題解決にクズ対策を掲載させていただきました。クズの抑制対策は今後の課題として、まずは刈り取ったクズから栄養豊富な優良な堆肥ができないか、また完成した堆肥から良好な土作りができないか、実践してみての報告です。
9月7日に試験的に透明ビニールいっぱい(約20リットルサイズ)にクズの茎葉と菌体発酵ぼかし、バナナの皮、食べた後の納豆パックのヌメリ湯を使って、発酵開始。定期的に振りながら発酵を促進。2カ月経過したクズの茎葉に、白い菌糸が増殖し、茎葉が黒く腐植化(微生物入りの堆肥=クズちゃん堆肥)しました。
ここで検証。クズの葉そのものにベータカロテンやルテインなどの抗酸化物質は含まれているものの、発酵に必要なタンパク含有は低いため、発酵力は弱い。よって、より安定した発酵促進を促すためには、カロリー量が高いタンパク質の添加が必要です。
鶏ふんや豚ふんなどがハイカロリーなタンパク源で有効なのですが、今回のように自然の植物繊維のみの堆肥化を目指すとなると、何か身近な素材はないか検討。候補として「米ぬか」「乾燥させた出汁がら」「生活廃油」などがあり、特に「生活廃油」は行政もバイオエネルギーとしてリサイクルを推進していますので、優秀な素材と言えます。米ぬかは、ぬか床のもと、生産者の土壌改良資材として人気があり、入手が難しい状況です。少量でよければ、出汁パックがらは有効でしょう。今後もクズ葉の発酵力向上が課題です。
さて、試験的に作成した「クズちゃん堆肥」の生育試験を開始。プランターに肥料を含まない培養土とクズちゃん堆肥を入れ、草花のパンジー、野菜のカツオ菜苗などを定植。土のみの無施用、クズちゃん堆肥入り、肥料入り市販培養土などと生育の比較をこれから見ていきます。
私は、利用される素材(クズの茎葉)、身近な素材を使っての堆肥化(SDGs)、完成した堆肥の優良性(出口)が機能すると、理想の循環が成り立つものと考えています。
クズの繁殖力はすさまじいものの、試行錯誤しながら手を加えると、大地を豊かにする素材になるかもしれません。皆さんも、身近なところに目を向け、何かできないかとか、役立てることができないかなど考えるのも面白いと思います。
糸島がこれからもみんなの糸島であり続けるには、失敗してもいいから、課題解決に一歩一歩、足を進めていくしかありません。
現在、私は有機的な物質で、安全で環境を配慮した雑草対策ができないか、研究しているところです。失敗の連続ですが、「いつか、きっと」と夢を見て頑張っています。今後、糸島新聞を通じて環境の輪が少しずつ広がっていくことを心より願っております。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。