【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》合唱の歌声に気高さ

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猛暑の日々が過ぎ去り、落ち着いた気分で、芸術が楽しめる季節になった。澄み渡った秋の夕空を見上げていると、ふと、管弦楽の演奏と共に、高らかに歌い上げられる合唱が頭の中によみがえってきた。戦後日本を代表する作曲家、團伊玖磨(1924~2001)作曲の「西海讃歌」と合唱組曲「唐津」▼ともに、転勤先で出合った曲。管弦楽と合唱が壮大に響き合うのを聴きながら、音楽を地域の財産として大事にしている人たちの気高さを感じたものだ。西海讃歌は1969年の長崎国体と佐世保市民管弦楽団の第5回定期演奏会を記念して作られた。合唱組曲「唐津」は82年の旧唐津市制50周年に合わせて作詞作曲された▼それぞれに、いろんなエピソードがある。クラシック音楽ながら、西海讃歌は年配の長崎県民とってとても親しみがある曲だ。実は、かつて地元放送局の夜中の天気予報で長年流され、子どもたちには就寝時刻の合図になっていたという▼一方、合唱組曲「唐津」は長く埋もれた存在になっていた。7章で構成されるが、市制50周年の記念式典では最終章の「唐津市歌」が歌われただけで、全曲を通した演奏が行われないままになっていた。曲に命を吹き込もうと、文化団体や商工会議所などが合唱団員を募り、九州交響楽団の演奏と共に2016年、全曲の披露が実現した▼唐津ではその後、市民合唱団「唐津」を歌う会が誕生し、毎年12月に定期演奏会を催している。折しも今年は團伊玖磨生誕100年。佐世保市では、歳末チャリティコーラス・コンサートで、250人が西海讃歌を大合唱する。「唐津」を歌う会会長の山浦五郎さんと、長崎県合唱連盟佐世保支部長の浦川栄一さんに、曲との関わり方について電話で尋ねてみた。すると、答えは同じ。「歌い続けていくのが何よりも大切」。音楽の文化財を守り、後世に受け継いでいく。郷土に大きな誇りを生み出している。

糸島新聞ホームページに記事掲載

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