新年を迎えたのを機に、糸島の将来像を思い描いていると、ふと「もっている」という言葉が頭に浮かんできた。九州大学伊都キャンパスの移転が着々と進み、六本松地区から全学教育などが移ってきた15年ほど前、ちょうど、この言葉がはやっていた。「ハンカチ王子」と呼ばれ、早稲田大野球部で活躍していた斎藤佑樹さんがこの言葉で、新語・流行語の特別賞を受賞していた▼「糸島は『もってますよね』。古代から、そういった土地なんですよ」。巨大な建物が続々と建ち、「アジアを重視した世界の拠点大学」にふさわしいキャンパスへと整っていく様子を見て、糸島市の職員がこう語っていたのを鮮明に覚えている。はるか昔、稲作をはじめとした新しい文化を大陸から、いち早く受け入れ、日本の国の形づくりにつながっていった地。古代も、現代も、時代の最先端を走っている。確かに「もっている」のである▼大陸との玄関口という「地の利」。時代を問わず、最先端のものを引き寄せる力の源は、この点にあるのだろう。昨年12月、糸島の未来に大きな影響を及ぼすビッグニュースが飛び込んできた。米不動産投資・開発のアジア・パシフィック・ランドグループの日本法人が糸島市多久、富に大規模データセンターを建設する計画が明らかになった▼今春着工予定で、投資額は3000億円超を見込む。市の本年度一般会計当初予算が456億円であることからみても、想像の域を超えた大事業だ。この事業にまつわる「もっている」については、あらためて小欄で触れたい▼「もっている」は、強運の持ち主といった意味合いで使われることがある。こうした点で挙げられるのがNHKの連続テレビ小説「おむすび」の主要な舞台となっていること。糸島の豊かな自然や食といった魅力がドラマの放送で全国に広まっている。糸島は「特別な何か」をもっているかのように、幸運に恵まれている。いずれ「ITOSHIMA」という地名が世界に知れ渡るときが来るのではないだろうか。糸島の今の勢いはそんな思いを抱かせる。
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