糸島マスエワイナリー昨年オープン
糸島の地魚と楽しむワインを造りたい-。新たな挑戦に満ちたグラスを掲げた、馬淵崇さん(43)。糸島初のワイナリー「糸島マスエワイナリ」(糸島市二丈松末)を昨年オープンし、自社醸造ワインを販売する夢を実現した。
馬淵さんは、地魚を扱う飲食店の経営や、魚さばきなどの体験を提供するコミュニティ「地魚BANK」の運営を手掛けている。
ワイン造りのきっかけは、2019年に漁業関係者と訪れたスペイン・バスク地方の視察だった。地魚料理と地元ワインを目当てに観光客が訪れ、地元の人も郷土の食や文化を誇っている様子を見て、「世界観にグッときた」。地魚を引き立てるワイン造りを目標に、ワイン醸造に取り組む決意をした。
ワイナリーの設立は、資金、酒造免許、技術、設備とすべてがゼロからのスタート。22年から宮崎県のワイナリーで醸造に携わり、酒類総合研究所(広島県)のワイン講習会にも寮生活をしながら参加。自らの仕事を休むリスクを負いながらも、「お店や『地魚BANK』の仲間たちが、自分の活動に共感して支えてくれた。結果を出すしかないと思った」。地元農家と一緒に荒れ地を切り拓き、国の補助金を活用して、開業資金を準備。昨年7月から醸造を開始した。
初めての販売は11月。JF糸島の直売所で開かれた「志摩の四季秋まつり」で、「STILL白」を提供した。志摩桜井で古くから栽培されている糸島産マスカットを使用し、フレッシュな香りとしっかりとしたボディが特徴。ハマグリや地魚にぴったりの微発泡酒だ。また「糸島のカキ小屋で、糸島産ワインを楽しんでほしい」との思いから、スパークリング「牡蠣(かき)シャン」や微発泡「牡蠣シュワ」も販売。今年からは、自社農園で栽培したブドウを使ったワインを造る予定だ。
ワイナリーでは、宿泊や食事も順次提供していく。馬淵さんが目指すのは「おらが街ワイナリー」。「『あそこのワイナリーは、私たちも一緒につくったんだ』と、地元の人や仲間たちが一緒に関わり、誇りに思える場所をつくりたい」と話す。
ゼロからのスタートに、小さな一歩を積み上げてきた馬淵さん。地魚とワインが織りなす物語が文化として根づくことを信じ、これからも歩み続ける。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)