【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.116(4/11号掲載)

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プロのキュウリ生産者に聞く

 春夏野菜の代表的な存在であるキュウリ。スーパーでは一年中出回っていますが、出荷量でみると、宮崎県は全国一。冬場の温暖な気候や厳寒期の日照量、ビニールハウス内を暖めるコストの安さなどが要因で、さらに他県からの出荷が少ない時期にキュウリを市場に出すことができるので出荷量が断トツで多いのです。

 福岡県内では、施設栽培が多い久留米市や朝倉市などで盛んに栽培されていますが、糸島市も代表的な農産物の一つです。

ハウス内は大きくきれいな葉とたくさんのキュウリが実をつけている

 一般家庭での栽培では、支柱を立てたり、ネットを張ったりと、少し大変な作業が必要ですが、次から次と実をつけてくれるので、収穫の楽しみを味わえる野菜でもあります。では、うまく育てることができるコツをプロの生産者に聞いてみました。インタビュー先は、糸島市のハウスキュウリ生産者の田中清美さんです。

 ▼生育期前半は、実が小さいタイミングでどんどん収穫すること

 実がついたばかりの株はまだ成熟していないことと、キュウリは根の再生力がひじょうに弱く、生育前半での実の肥大などは株自体の負担が大きく、後々の成長に悪影響を及ぼします。最初の実が小さいうち(8センチほど)で収穫することに徹してください。

 ▼若い苗を定植すること

 どうしても家庭菜園を楽しまれる方は、植え込む苗が大きいほど立派に成長すると思っている方が多いようです。確かにトマトやナス、ピーマンなどのナス科野菜は、本葉が7~8枚の花芽付のような立派な苗を植え込む必要がありますが、キュウリは本葉が3枚程度の若々しい苗を植え込む必要があります。

 逆に本葉がたくさん展開し、おまけに花まで付いたような苗は、相当、根が老化している可能性があり、定植しても根の再生がうまくいかず生育が滞り、収穫量も減収します。

 ▼液体肥料はおすすめ

 キュウリは95%が水分でできています。おいしく、きれいな果実にするためには、水やりと早効きの栄養補給が必要不可欠です。肥大期に水が足りないと、折れ曲がったような変形果や果実に穴があく、空洞果ができてしまいます。

 どんどん実をつけるのに栄養不足になると、収量低下だけでなく、尻細りや曲がり果が増え、きれいに真っすぐ伸びたキュウリとはいきません。根からスピーディーに吸収されやすい希釈した液体肥料をこまめに与えると、生育維持に役立ちます。

 特に梅雨明け以降の水やりや追肥は非常に大切になります。梅雨明け以降は土が乾燥することのないよう、雨がなければ頻繁に水やりをするように心がけてください。

 キュウリは、病虫害も発生しやすい品目ではありますが、生育に関しては比較的強健な野菜の一つでもあります。生活用品や食材が値上がり基調の中、たくさん収穫ができるキュウリは魅力を持った大切な夏野菜の一つです。

 プロの生産者も土づくりにはしっかり念を入れ、的確な生育診断のもと、必要な栄養素をピンポイントで与えるなど、日々、生産技術を高め、品質が高く、安定的な出荷を目指しておられます。私たちも地元産の消費という形で生産者の方々を応援したいですね。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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