【ドクター古藤の園芸塾】 11
栽培中に異変が起き、私のところへ相談があった話を今回もします。
「ホウセンカの花ば育てよったら、茎やらしっかりして、こりゃ~上出来と思っとったら、突然しおれてきたけん、こりゃ~いかんと思って、根ごと引き抜いたら、おったまげた~。根にぶくぶくコブのいっぱいついとるやんね。どげんこげんもなか、アグリに相談にきたとですたい」
「こりゃ~ひどかですな~。これはネコブセンチュウですたい」
近年、問題化している土壌害虫です。トマトやピーマンなどのナス科、ゴーヤーやキュウリなどのウリ科、ニンジンなどの根物野菜、オクラ、キクなどで被害が拡大しています。
センチュウに寄生されると根は数珠のようにコブが膨れ、栄養の吸収が阻害されます。そのため、地上部はしおれ、収量が低下し、ひどいと枯れてしまいます。厄介なのは無数の卵で越冬した後、適温になると活動し、根に寄生を繰り返すことです。
ただし、センチュウ類は現在2万種確認されており、ほとんどが土壌の腐葉土をエサとして分解してくれる腐食センチュウなど有益です。しかし、ネコブやネグサレセンチュウなど寄生性があると、植物にとって悪玉です。
プロの生産者は土壌消毒など行ない、密度を下げたりしますが、菜園の方には簡単な作業ではありません。
そこで有機的な対策を紹介します。可能限り連作をしない▽センチュウの密度を減らす「対抗植物」を利用する。例えばマメ科のクロタリアやイネ科のギニアグラス、キク科のマリーゴールドが代表的な作物。ただ、センチュウの種類によって効果がぶれるかもしれませんので、注意が必要▽エビやカニ殻を土と混ぜる。カニ殻が直接センチュウ抑制に働くことはありませんが、センチュウを抑える有益な微生物のエサになります。エビやカニ殻は土壌微生物の大切なエサの一つです。
センチュウがいない畑はありません。善玉なのか悪玉なのかが大事で、連作したり、化学肥料に頼ったりして、堆肥などの有機物が少ない、土壌が酸性化しているところは、悪玉センチュウが増殖する環境になってしまっています。
糸島農産物は豊かな土から生まれてくるものであり、土の中の有益な昆虫や微生物が、ぬくもりがある大地を育ててくれます。
土のメカニズムは複雑で、未だ解明されていないことも多いといわれています。土が何かおかしいと感じられたら、JAまでご相談ください。放置しないことが大切です。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年2月3日