【ドクター古藤の園芸塾】 15
タマネギを栽培されている方、生育状況はいかがでしょうか。昨年11月に早生系、下旬から12月にかけ中生・中晩・晩生種のタマネギ苗を定植されたと思いますが、順調に育っていますか。
昨年末にかけては、暖冬少雨傾向。1月中下旬は10年に1度といわれた寒波。天候変動の大きな冬となっていますね。とはいえ、3月は葉も食べることができる超極早生系品種の収穫が始まり、3月下旬には極早生系、4月中旬は早生系、5月上旬は中生、下旬には中晩生、6月は晩生種と随時、収穫が進んでいきます。
収穫後によく相談を受けるのが、「うちのタマネギは、すぐ腐るとばい。どうかならんとですな」と。この3月上旬、タマネギ栽培にとって重要な時期となります。特に貯蔵性の高い中生種以降の品種は、病害予防、貯蔵性向上のため、必ず一手を講じる必要があります。なぜならば、3月から4月上旬にかけては、台風並みの「春一番」などが吹き荒れるのが心配で、雨を伴った強い風は、タマネギの葉を傷つけたり、株元が過剰水分に陥り、病原菌が繁殖しやすくなったりします。
タマネギに限らず、植物管理は病害が発生すると、なかなか処方が難しくなります。やはりここは予防に徹することが、最も重要です。そこで、どのような対処を行なったらよろしいのでしょうか。
▽生育があまり良くないといって、不意な追肥を行わないこと。この時期に追肥を与えると、チッソ成分を貪欲に吸収し、葉が生育しすぎて逆に球が太りにくくなり、倒伏もしなくなります。俗に言う「青立ち」でネギ状態になります。万が一、葉色が薄くなり、肥料不足と感じたら、栄養持続性が低い、液体肥料を与え、生育の様子を見るべきです。当JAではオリジナル有機液肥「エコアース」300倍稀釈液をお薦めしています。
▽カルシウム専用肥料を与え、タマネギの細胞を強化し、病害抵抗性、貯蔵性を高めてください。お薦めは「ホワイトカリウ」、または「畑のカルシウム」。いずれかを100グラム/坪目安に収穫時まで月に1度のペースで与えます。カルシウム補給は、タマネギに限らず、全ての植物に必要な要素ですので、春野菜のトマト、秋野菜のハクサイ、パンジーなどの草花など1年を通して与えることをお薦めします。
▽プロの生産者は規定に準じた所定の薬剤散布を行い、防除に努めますが、家庭菜園者は量的にも多すぎますね。そこで、有機的防除として、家庭でも身近な「食酢」「重曹」の稀釈散布がお薦めです。特定防除資材として国も認めている素材で、ともに100倍稀釈し、定期散布してください。安全な素材で、予防効果はそこそこ高いのですが、持続性が乏しいのが欠点。1週間に1回のペースで散布が必要でしょう。食材価格が高騰する中、貴重なタマネギをしっかりと育ててください。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年3月10日