【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》「中年の危機」をやわらげるには

まち角アイキャッチ

中年期の40~50代にかけ自身の人生に対し、悩みや焦り、不安を感じる「ミッドライフクライシス(中年の危機)」を経験する人が増えているという。人生の折り返しを意識する年代。男性は社会的な立場で、若いときに思い描いた希望と現実との隔たりに悩みが生まれるとき。女性は、心身が不調になる症状が出たり、子育てを終えて自身の役割を見失ったりする人も▼60歳を過ぎると、社会の中での競争がやわらぎ、試合終了後の「ノーサイド」という心境の人も多いだろう。自身の50代を振り返ってみると、能力の限界が見え、先を見通せないまま将来に不安を抱き、不眠続きだったことがある。自分を責めてみたり、後悔したり。疲れ果てた時、ユーチューブの番組で、たまたま出合った言葉がもやもやした状態から抜け出させてくれた▼「頑張ったね。おつかれさま」。心に染みるこの言葉を自身でもつぶやいてみた。そのとき、自分に対する優しさがどれだけ大切なことか、気づかされた。自身の評価を低くしてしまい、人生の意味や目的に疑問を感じるミッドライフクライシス。自身を大事に思うことで、そこから解放されていった▼禅に「任運自在(にんうんじざい)」という言葉がある。運とは、自分ではどうしようもならない大きな流れ。それに逆らい、思いをかなえようとするから、苦しみが生じる。運の流れは変えられない。ならば、それに身を任せる。こう説いているのだと思う▼あるがままに運を受け入れる。とはいえ、中には不運もある。だが、この世は諸行無常、一切のものは常に変化し生滅する。不運がいつまでも続くことはない。運をつくっているものは何であろうか。「因果応報」という、日常でも使われる仏教用語がそれを教えてくれる。善い行いは幸運、悪い行いは悪運を引き起こす。とはいえ、「やるだけのことはやったのに、報われていない」と感じる時は多々ある。種をまいて実がなるまでに時間がかかるように、結果は時間差を伴って現れてくる。ミッドライフクライシスをやわらげてくれる教えだと思う。

糸島新聞ホームページに地域密着情報満載)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

目次