「安全、健康、幸せ、穏やか」。知人の勧めで、朝目覚めたとき、こう唱えてから起床することにしている。何者からも危害を加えられる恐れがなく、心身ともに患っていない。それがどれほど幸せなことか、感謝の気持ちを込めて感じ入り、穏やかな境地で一日をスタートさせるよう努めている▼ウェルビーイングという言葉をよく耳にするようになった。分かったような分からないような、とらえどころのない言葉。そんな受け止めぐらいしかしてこなかった。とはいえ、幸福度の向上に役立つ世界的に注目されている概念。そんな思いで、さまざまな解説文を読んでみると、毎朝寝覚めた時に唱えている言葉も、この概念に一部当てはまっていると感じ、徐々に理解できるようになってきた▼ウェルビーイングとは「Well(良い)」と「Being(状態)」を合わせた造語。世界保健機関(WHO)憲章の前文は、「健康」について「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」(日本WHO協会訳)と定義している。これがウェルビーイングの概念の基礎になっているという▼高度経済成長期だった子ども時代を振り返ると、経済的な豊かさが国民の幸せととらえられていた。白黒テレビがカラーテレビに替わり、台所には電子レンジがお目見え。新たな家電が増える度に嬉々(きき)としていた。あの時代は経済の豊かさを表すGDP(国民総生産)が幸福度の物差しだった▼だが、経済が発展し成熟した社会では「物質的な豊かさ」よりも「心の豊かさ」が優先されるようになっている。だからこそ、ウェルビーイングはこれからの社会にとって重要な概念となっている。米国の心理学者マーティン・セリグマン博士らは幸せを感じる五つの要素を提唱する。「ポジティブな感情」「何かへの没頭」「他者との関係性」「生きる意味」「達成」。ウェルビーイングでいられるためのモデルだ。新たな気づきがある度に、ウェルビーイングについて取り上げていきたい。
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