【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.136(9/12号掲載)

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噴霧器のイロハ

 9月に入ってもなかなか気温が下がりませんね。朝の涼しさは若干感じられますが、日中だと太陽の日差しが真夏並みで「暑かあ~、しろしかもんじゃかな、畑におられんばい」と近くの畑で嘆いていたおじいちゃん。

 とはいえ、9月は秋冬野菜栽培にとって重要な月。キャベツやブロッコリーなどの苗植え、ダイコンやカブなどの種をまいた後の初期生育が収穫を左右します。そこで、今回は、数ある園芸資材の中で、初期生育に役立つ身近なアイテム「噴霧器」をクローズアップしてみました。

 噴霧器といえば、用途は限られています。作物の病気や害虫の防除、除草をメインに使われています。タイプはハンディー、肩掛け、背負いとさまざま。動作も人力、エンジン付き、最近ではバッテリーの高性能化による電動タイプも人気です。

 今回、ご紹介するのは、背負い式半自動蓄圧人力噴霧器10リットルで、噴口は2口タイプ。レバーを前後すると蓄圧されながら、勢いよく噴霧されます。吐出量を何回か実際に調べると、おおむね600ミリリットル/分。1タンク(10リットル)連続約17分の散布能力。さらに、薬剤の場合は下限で、1坪当たり170ミリリットルの指定希釈液散布となります。機種や使い方によって、多少誤差はありますが、散布目安になると思います。

噴霧器各種。写真左からハンディー、肩掛け、背負い式、除草剤専用、エンジン付き

 気温上昇にともなう作物の生育ストレス軽減や栄養補給対策として、注目されているのが液体肥料の葉面散布。希釈液体肥料の葉面散布は、指定希釈液をおおむね600ミリリットル/坪目安にし、たっぷりと行うことが重要です。ジョーロでいいだろうと言われますが、葉から流れ落ちてしまいますので、霧状で葉に養分を吸着させた方が、格段と肥料効果を発揮することができます。

吐出量を計測。300㍉㍑/30秒

 これだけ気温が高いと根からの養分吸収に勢いがないので、噴霧器を使った葉面散布は早めの肥料効果が期待され、作物の生育を助けてくれます。ここ数年、急速に多種多様な液体肥料が販売されていますので、製品特性や使用方法など詳しい情報は、販売店などでご相談されてください。

 気温が高いとはいえ、確実に日は短くなり、作物の光合成などの活動が低下してきます。日の長さを利用した作物の初期生育をしっかり助けてあげることが、気候変動によって作物栽培が難しくなる中、収穫の手ごたえを感じられる一つの手段となるでしょう。

さまざまな希釈済の液体肥料

 野菜などに限らず、花壇のお花などにも葉面散布は有効です。特に人力系はタイプも価格もリーズナブルなものも多く出回っていますので、植物へのサプリメントとして与えてみてはいかがですか。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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