【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》皆既月食で現れた冬の星座

まち角アイキャッチ

主役の月ではなく、脇役の星々に心を奪われた壮大な天体ショーだった。8日未明から明け方にかけ、3年ぶりに国内で観測された皆既月食。満月が地球の影に隠れることで起きる。月全体が最も深く影に入った午前3時過ぎに起床し、夜空を見上げてみた。赤銅色に染まった月は神秘的だったが、その時、より存在をアピールしていたのは、天頂を横切って流れる銀河だった▼「満月が欠け、暗くなっていくにつれ、星の数が増えていくのが面白かった」。高校時代、皆既月食の撮影に挑んだ天文ファンの同級生がこう話したのを思い出しながら、満月が皓々(こうこう)と照っていては、その光に隠されてしまっていたであろう銀河を見渡してみた▼北西の流れのほうに目をやると、W形をしたおなじみカシオペア座。天頂のほうを向くと「すばる」の名で知られるプレアデス星団、そして、南東へと銀河の帯をたどっていくと、砂時計の形をしたオリオン座、さらに最も明るい恒星のシリウスが青白い光を放つ。これらは秋から冬に見られる星座。ただ、9月初旬であっても未明の時間帯には見ることができる▼夏の銀河と比べ、冬の銀河は淡く見え、繊細な美しさがある。その夜空は、平安時代の随筆家、清少納言の心もとらえている。枕草子に「星は、すばる。ひこぼし。ゆふづつ」と、美しいと思う星々を記し、その一番目がすばる。ひこぼしは、わし座のアルタイル、ゆふづつとは宵の明星(金星)だ▼肉眼では、六つほどの星が集まっているように見えるすばる。この星団は、ギリシャ神話では、7人の美しい姉妹が森の中で、乱暴者の狩人に追いかけられ、ハトに姿を変えて天高く飛んでいき、この星々になったと伝わっている。その狩人は、すばるの近くにある星座のオリオンだ。そして、オリオン座の隣にあって、シリウスが輝いているのは、おおいぬ座。この星座の犬は、オリオンが狩りをするときに伴っていた猟犬と言われる。次回の皆既月食は来年3月3日。ひな祭りの星空で、また想像豊かな物語と出合えることを楽しみにしている。

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