【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.142(10/24号掲載)

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気温上昇 難しくなる

 10月に入っても、昔の秋の気配が感じられないので、気象庁の過去データから前原(糸島市)地点や福岡地点の気温変動を調べてみました。

 前原地点は過去データが少ないので、1994年と2024年の気温差比較。福岡地点は、私が生まれた1964年と、1994年、2024年の比較で、それぞれ秋の10月、年が明けての冬の1月、春の3月について比べてみました。別表を参照してください(データからの抽出なの正確性は低いです)。

 いやー、驚きました。前原での30年前の10月と昨年同月の日平均温度は3度上昇。1月を同様に比べてみると、0.2度しか上がっておらず、気温変動は少ない。ただ、3月になると、2度上昇しています。

 福岡での60年前の10月と昨年同月をみると、3.7度上昇。1月は1.6度上がり、3月は4.2度上昇していました。秋に気温が上昇する傾向があり、冬本番の1月は目立った気温の変化は起きていませんが、春先の3月になると、気温の上昇がみられています。

 なるほど、ダラダラと高めの晩秋から、冬の急激な気温低下後、春先の早めの気温上昇が見えてきますね。

 夏季は、高温によって柑橘(かんきつ)の日焼け症が発生したり、突如の豪雨により高温多湿状態になり土壌病害が発生しやすくなったりします。

温州ミカンの日焼け症
高温乾燥時に急激な降雨により、白絹病が発生したヒマワリ
9月の高温乾燥で、定植したキャベツ苗が活着しにくい

 この気温変動の中、秋まき冬採り目的の露地栽培のキャベツやブロッコリー、ダイコンなどの栽培は難しくなっています。気温が高いので、種まきなどを少し遅めに行っても気温が下がりにくいので、生育はどんどん進み前進傾向。ところが、今度は急激な低温が続き、生育が停滞。春先の早めの気温上昇で、じっとしていた野菜も急な気温変化についていけず、とう立ちが増えたり、大きくならないまま、収穫しなければならなくなったりといったことが起こっています。それが原因の一つなのか、野菜の品薄状態が続き、昨年末から本年にかけてスーパーや直売所の小売り価格も高めに推移していました。

冬の低温で凍ったブロッコリー

 夏の日中は40度に迫る気温が続き、夜温も下がりにくい。秋も汗ばむ陽気。このような気温の中で、野菜はうまく育ってくれる方法はあるものなのか。各種苗メーカーは耐暑性のある品種への改良に取り組まれ、期待もされていますが、まだ時間がかかりそうです。私もいろんな酵素を使ったり、ミネラル資材を使ったりして、生育試験を行っていますが、そう簡単には結果が出てきませんね。

 ただし、暑さ寒さに負けない強い野菜(作物)作りは重要と考えています。やっぱり、夏は甘いトマトを食べたいし、冬はみずみずしいダイコンでおいしいおでんも食べたい。柔らかいカブの浅漬けと新米でご飯を食べたい。皆さんも同じ思いをもっておられるでしょう。今後も現在の環境に合わせながら、適合できる作物栽培の研究を続けていきたいと思います。 

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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