一緒にいるという心強さが前に進んでいく勇気を与えてくれる
「良質な盲導犬を一日も早く一頭でも多く」をモットーに、視覚障がい者に盲導犬の無償貸与ができるよう40年前に設立された九州盲導犬協会。中村博文理事長に、さまざまな団体や企業、個人の善意、ボランティアの協力によって支えられている活動について聞いた。
-盲導犬は英語で「Guide Dog(ガイド・ドッグ)」。視覚障がい者が安全で快適に歩行できるよう誘導する役目があります。ただ、役割はそれだけでなく、人生のパートナーとしてユーザーには欠かせない存在と言われますね。
「盲導犬は、視覚障がい者の目となり、足となり、ユーザーの方が、行きたい時に、行きたい所へ自由に行けるようにし、自立と社会参加の手助けをしています。盲導犬が一緒にいるという心強さが前に進んでいく勇気や自信を与えてくれるのです。どんなにロボット技術が発達しても、障がい者と温かく心を通わせる盲導犬は、いつまでも大切な存在であり続けると思います」
-九州盲導犬協会では、盲導犬歩行指導員や訓練士、研修生の計8人が盲導犬の育成にあたっているとのことですが、多くのボランティアによる支援も受けているそうですね。
「盲導犬となる犬は、繁殖犬から生まれます。繁殖犬が元気な子犬を産めるよう世話をする繁殖犬ボランティア、生後2カ月から訓練が始まる1歳になるまで愛情を込めて家庭で育てるパピーウォーカー、そして盲導犬を引退した犬を家族の一員として迎え入れて楽しく暮らすリタイア犬ボランティアもいます。パピーウォーカーは、犬と一緒に暮らしてみたい子どものいる家庭や、最近は定年退職後に『社会貢献をしたい』との気持ちで申し込んでこられる方もいます」
-盲導犬を1頭育てるのに500万円かかると聞きました。その費用のほとんどは寄付金や募金などで成り立っているそうですね。
「年間に約9千万円の事業費が必要ですが、このうち8割ほどが民間の寄付金によるものです。団体や企業に街頭募金を実施していただいたり、個人では遺贈金を寄付されたりする方もおられます。昨年度、賛助会員数は1269名で、募金箱の設置先は2323件に上りました。新型コロナの影響で街頭募金の回数は減りましたが、これから復活していく中で、多くの支援が得られるよう啓発活動に力を入れていきます」
-九州盲導犬協会は、必要とされている方の数に応じ、年間8頭盲導犬を育成し、現在は48頭が実働しているとのこと。協会のエリアではユーザー数に大きな変動はないものの、全国的にみると、ユーザーの高齢化などで盲導犬の実働数は減っていると聞きました。
「盲導犬が無償で貸与され、必要に応じて訓練士が生活のフォローアップをしていることを知らず、ユーザーになるのをあきらめている方がいるのではないかと思います。盲導犬を普及させていく活動に、これからもしっかりと取り組んでいきます。九州で唯一の盲導犬訓練施設として貢献できているのは、みなさまのご支援のおかげです。視覚障がい者の方が盲導犬と安心して暮らせるよう、ご理解とご協力をお願いいたします」