糸島新聞
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続・糸島伝説集【1】

2021.10.8

今も残る清明井

昭和8(1933)年に糸島新聞社が発刊した『傳説の糸島』(鷹野斜風著)は、300冊と少部数だったため、戦後になっても増刷を希望する人が多かったが、物資不足など諸事情ですぐには発刊できず、読者の要望に応えるために昭和23年から本紙で連載した。今回は、その連載や初版本の中にありながら、改訂版などでも紹介できずにいた糸島の伝説を紹介していこう。

火除けと安産の清明井 糸島市神在

『神在(かみあり)』という地名は、昔、神功皇后がこの地を通られた時に、紫の美しい雲がたなびいているのをご覧になって「ここにまさしく神の在(ましま)すであろう」と、宣(のたま)われたので、それ以降から神在と呼ばれるようになったと伝わっている。

加布里コミュニティセンター前の信号機から長野川沿いに進み、右側の水田の中を眺めると、ちょうどJR筑肥線の線路の南側、かみあり保育所の西側辺りに、トタンで覆った井戸があり、この井戸を「清明井(せいめいい)」と呼ばれている。

今は田んぼの中にポツンとある井戸だが、昔はこの辺りは長糸往還が通っていて、道沿いには神在村の納冨家や藤瀬家、東村の西原家などの庄屋宅があった。しかし、この辺りはたびたび水害に見舞われることから、今から四百三十年ほど前、神在神社側に移転することになり、跡地は水田に開墾された。そのため、井戸の近くの水田地帯は古屋敷という。

この井戸は、利休が作った庭園があるという納冨本家の井戸は、有名な平安時代陰陽師・安倍晴明が掘ったと伝わっていて、火事を未然に防ぐとか、難産で困っている女性にこの井戸の水を飲ませると無事に出産できる―など、霊験あらたかな水として近隣住民の尊敬と信仰を集めていたので、誰も手を付けず、水田の中に残ったのだと伝わる。

また、近くで火事があった場合、この井戸に竹笹を浸してきて、猛火の前で打ち振ると見る間に火勢が衰え、次第に鎮火して類焼を免れたという。ある時、牧の住宅の納屋が火事になった際、火が隣接する母屋に燃え移ろうとして猛烈な熱が襲った。家人が屋内の家財を持ち出すこともできずにいると、近所の男が竹笹を清明井に浸してきて打ち振ると、不思議に火勢が弱り、母屋は延焼を免れたという。

こんなことで、昔から神在は火事が少ないとか言われ、『牧の一軒火事』という頼もしい言葉も生まれ、他の地域からうらやましがられた。清明井は地元だけでなく、近郷界隈の信仰の対象になったという。

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