糸島新聞
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続・糸島伝説集【11】

2021.12.10

黒焦げ観音と迎え坂(下)西区今宿上ノ原

 しばらくすると、そこへ鉢伏観音の堂守が駆け付けてきて、木像をじっと見上げていたが、にわかに木像の前にひれ伏し三拝九拝した後、漁師たちに向かって「昨夜、愚僧の枕辺に鉢伏の観音様がお立ちになり、『先日、高祖山の火事の際、火が鉢伏山に燃え移り、本尊も御堂も焼き尽くそうとしたので今津の海に飛び込んで災厄を逃れることができた。そして今日、浜崎の漁師たちの網によって引き揚げられたが浜に置かれたままになっているので、すぐに迎えに来るように』と仰せられると同時に、その御姿は煙のように消えてしまった。それから愚僧は不思議でたまらず、一睡もせずに夜明けを待ってここに来たのだ。この木像は黒焦げになってはいるが、格好といい気高さといい、鉢伏の観音様に間違いない」と話した。

 堂守の話を聞いて、正直者の漁師たちは大いに恐縮して、それぞれ昨夜の夢のことを語り合い、堂守に不敬を謝罪し、「私どもの手で鉢伏山にお送りしましょう」と申し出た。

 この不思議な話がたちまち遠近に広がって、村人総出で鉢伏山の焼失してしまった御堂を再建することになった。再建までの間、浜崎の漁師の家に一時的に安置されていた木像は御堂が完成したので、善男善女の村人が木像を車に乗せて御堂へ向かった。

 ところが相原の村はずれの坂道に差し掛かると車が止まってしまい、押しても引いても動かない。「これは観音様のお気に召さないことがあるのかもしれぬ」と、占ってもらうと「元の鉢伏に帰るのはいやじゃ」とのお告げがあった。

 そこで一同は「どうしたものか」と思案の末、相原村にある長福寺(現・順光寺)の観音様を鉢伏山にお移し申し上げ、その後に黒焦げの観音様を安置することになったのだという。

 この不思議な黒焦げの観音様は、長福寺の火災の際に焼失したということである。また、車が止まったところを「迎え坂」と呼ぶようになったと、地元の古老たちは伝えている。

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